《並木亭》日常会話
Bashi《並木亭》日常会話[web全体で公開] 1 | |
登録日:2021/07/29 08:11最終更新日:2021/07/29 08:11 |
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48. 白猫 | |
2022/07/06 23:38 |
ひと月にも及ぶ祝勝会を終えた、とある日の夜中。 「さてと、これで忘れ物はないはずだ」 そう言ってレイストは背負い袋の中身を確認していく。 一年間世話になった宿の床にはマテアルカードや魔晶石、護符などがずらりと並べられている。 それはまるで何年も旅をするかのような周到さだった。 「この宿にも世話になったな。長いようで短かった。そんな気もするな」 壁には三本のメイスが立てかけられている。 すり減り、傷つき、汚れも目だっている。それでも丁寧に手入れをされた愛用の武器たち。 机の上には大事そうに置かれている”聖騎士の印”がある。 「ルンフォの姉妹たちにも世話になったな。今度並木亭に顔を出すときには何か料理のレシピでも差し入れないとな」 「ウェーブも並木亭のマスターになるって張り切ってたしな。何かお土産でも見繕ってやらないと。アクセサリーとかでもいいのかな。でもいきなりだと変か?うーん・・・」 部屋の中央の床に座って腕を組んで悩み始めるレイスト。しかし数分もすれば諦めたのか、そのまま床に寝転がる。 そっと顔を右に向ければ、包帯を巻かれた右手が目に入る。 「妙な実験、俺の故郷、この力。忌々しいと思っていたが、終わってみればこんなものか。なんだかんだみんなで一緒に乗り越えたってことだよな」 「この力も、使い方次第では穢れも吸い込めるってのはフレアの姉貴が示してくれたんだ。俺にだってできるはずだ」 「俺に何人救えるか分からないけど、やってみようって思った。俺を助けてくれたフレアの姉貴のように。ナイトメアである俺を受け入れてくれた並木亭やカイルさんのように。一緒に戦ってくれた仲間のように。おれも誰かを助けてみたい」 そういうとレイストは首から下げている小さな聖印を握る。 そこにはマイナーな、しかしよく知っている神の聖印が刻まれいる。 「俺はナイトメアだ。差別の辛さを知っている、”始まりの剣”級の冒険者だ。この長い寿命なら、一人くらい救えるかな」 「・・・さて、明日は早朝出発だ。もう寝ないとな」 そういうと、ハーヴェス王国のとある宿の一室から光が消える。 数年後・・・大陸の各地で旅装束の大ぶりのメイスを担いだナイトメアが秘境や隠れ里を訪れては、同じナイトメアの少年少女を連れ出して、生き残るすべを教えているという、摩訶不思議な噂が立つこととなった。
47. アイ・オウ(I.O) | |
2022/04/02 07:26 |
ある日の昼下がり。 バリーは久しぶりに並木亭を訪れた。 ティダンの司祭服を纏い、手には大きな包みを抱えていた。 たまたまなのか、店内は誰もおらず静まり返っていた。 「マスターも出掛けられたか・・・・・」 バリーは包みをカウンターの脇へそっと立て置く。 中身は「光魔の槌」 並木亭で自身が不要になったと同様に、司祭への道を進むバリーには不要な物となった。 「マスター、皆さん、お世話になりました。いつまでもお元気で」 並木亭での要件は済ませたので、後ろを振り向かずに立ち去った。
46. 白猫 | |
2021/08/22 00:16 |
レイスト 13話裏にて 燃え盛る里、群がる魔動機、見る影もないリジ―の故郷。 その光景を見たレイストの脳裏に浮かんだのはあの方の一味への敵意や、リジ―への同情ではなく、自身の故郷のことだった どうしようもなく閉鎖的な里。生まれながらにして穢れた存在として忌避されてきた自分。迫害レベルの虐めを受けてきた里。そんな里のことを思い出していた。 ああ、あの里もこうなってしまえばいい、と。 しかし、それも数秒の間だけであり、目の前の現実を見る。 「・・・俺は逃げそこなった人や生き残りを探してくる」 仲間から引き留めるような声も聞こえていたが、レイストは振り切るようにして進んでいく。一瞬でも不謹慎なことを考えてしまったが故の罪悪感にかられながら。 それからしばらくは一人で倒壊した家屋を調べたり、集団からはぐれた魔動機を叩き壊してくレイスト。 東から魔動機が飛んできていることや、大きな木に魔動機が群がっていることに気が付きながらも、合わせる顔がないと、足は自然に反対方向へと進んでいく。 「並木亭の冒険者はみんな強い。俺が一人いなくても死ぬようなことはない」 そう自分に言い訳をしながら。 気が付けば遠くの方から大きな戦闘音がする。レイストはそれがみんなのことだと分かっていても、向かう事は出来なかった。 代わりに、倒壊した家屋から小さな子供の手が見ていることに気が付く。 生きているかもしれないと瓦礫を持ち上げた先には、腕だけがそこにあった。本来その先にあるはずのものはそこに無かった。 そして、レイストの脳裏にはふと、一言浮かび上がった。 「故郷の連中もこうなればいいのに」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 故郷を大切に思うリジ―とは対極に、故郷を憎むレイスト君であった。
45. あすか | |
2021/08/21 16:54 |
【シルファ・ベルフラワー】 13話後~ 「妖精使いの巫女、という方を知ってます?」 いつもの夕食の席で、私はゼノに問いかけた。 「いや、知らないな。どうかしたのか?」 「どうやらあいつらが捜しているらしいんですよ」 ゼノの回答を聞いて、”何も知らない”体で知りえた情報を話す。 「……なるほど。妖精と言えばアヴァルフ妖精諸国連邦が筆頭だが、あそこの巫女だったらわざわざ捜すまでもないしな」 「そうですね。そういった有名なところの巫女ではないでしょう」 「それこそ、シルファのところの……いや、すまん。言いたくないよな」 「えぇ」 一言それだけを返し、いつもと変わらぬ所作で肉を切り、口へ運ぶ。 「そういえばシルファは綺麗に食べるよな。どこかで教わったのか?」 「叩きこまれたんですよ。私もそれなりの身分はありましたからね。それこそ王と食事することがあるくらいには」 「それってかなり高い部類じゃないか?」 「大きなところではないから、身分の差なんてほとんどないようなものでしたけどね」 「そういうもんか」 それ以上の会話はなく、夕食は終わった。 どこかの妖精使いの巫女。 もし、私の故郷の巫女を捜しているのなら、見つからないと思いますよ。 だってその肩書を持つ少女は、もう存在しませんから。 「シルファ。確かに俺は一か月用意するとは言ったが、毎日の消費量を考えてくれないか……?」 「いやです」 「……はぁ。俺の貯金が……」
44. 雪翼依依 | |
2021/08/15 01:11 |
「こんにちは~」 レノンはいつも通り、クルルやリジーとの練習が終わったら、キッチンに行った。 冒険者技能の練習の続いては、料理の勉強。レノンは料理にめっちゃ興味持っている。 理由は単純。これにより食べれるものが多くなるから。 昔食べると踊る人が見えるキノコも、油いっぱい使って揚げたら幻覚が消える。赤い肉もゆでたら褐色になって、食べても腹痛くなることはなくなる。苦味のある野菜もちゃんと料理したら苦味がゆるくなる。 こんなことはレノンにとって魔法より大事で素晴らしいこと。 レノンは今も、あの時(キャラ経歴&創作《冒険者になる前の話》に参照)飲んだ卵酒の味を忘れない。あれは記憶の中で、初めて誰かが自分のために何か食べるものを作ったのかも。その味は甘くて辛くて、熱くて身体を焼き尽くそうで、生臭くてまずくて、泣きそう程美味しかった。 レノンはその時の優しいお姉さんのおかげで、料理は人の心も満たせるもののことを知った。 自分も、そんなもの作りたい。食べれないものを食べれるものに、まずいものを美味しいものに、飢える心を満たされるように、料理をしたい。 今の自分は、前の2つを出来た。でも、最後のはできなかった。 どれほど自分が作ったものを食べても、あの日の卵酒と敵わない。ルンフォーシスターズが作ったものとも敵わない。どうしてかな。 やはり、もっと学ばないとダメかな。なので。 「アイン、ツヴァイ、ドライ、フィーア先生、今日もよろしく!」 レノンは、元気の声で、キッチンに飯の用意しているルンフォーシスターズに挨拶をした。
43. あすか | |
2021/08/14 20:12 |
【???】 「巫女様、どちらへ?」 「今日は少し外を歩いてきますわ。妖精たちが見せたいものがあるんですって」 「護衛は必要でしょうか?」 「いいえ、何かあっても妖精たちが守ってくれるもの。大丈夫よ」 巫女様と呼ばれた少女は、おっとりとした声でそのように言った。 「そんなに遠くへは行けませんよ?」 『いいでしょー、いっしょにあそぼうよー』『ぼくたちきれいなとこみつけたんだー』 「はいはい、少しだけですよ。もう、急ねぇ。どうしたのかしら」 巫女様と呼ばれた少女は、妖精に連れられ森を歩く。 (嫌な気配がする) 巫女様と呼ばれた少女は、感じた気配に振り返る。 『どうしたの?』『いっしょにいこう?』『ほら、あっちだよ』 「……ごめんなさい。私、戻らなきゃ」 『なんで?』『だいじょうぶだよ』 巫女様と呼ばれた少女は、歩いた道を引き返す。 「ったく、あいつもこんな面倒な仕事を押し付けやがって……」 男は一人、溜め込んだものを吐きながら歩いていた。 小さな集落との橋渡しをしろ。移動手段は用意しない。迅速にパイプをつなげ。説明されたのはそれだけ。 煙草の一つでも吸いながらじゃないとやってらいれない、とばかりに箱最後の煙草を咥える。 「っと、森か……」 急に目の前に広がった景色を見て、点けようとした火を止める。小さな溜息を吐きながら咥えた煙草を箱に戻す。 (認識阻害によって、そこにあることを知らなければ入れない、とはな。原理はどうなってんだろうな) そう考えつつ、さて、と男はそれまでの雰囲気を一新する。仕事にきたのだ。先までのだらけた状態ではいられない。 (……聞いていた雰囲気とは違うな) 妖精にあふれた温かい集落、そう聞いていたが。目の前から感じるのはどこか冷たい雰囲気。 「……嫌な予感が当たってなければいいが!」 急いだほうがいい、直感が告げたその言葉に従い、男は走り出した。 「どうなってんだ……?」 男が目にしたのは、焼き払われた一帯と、積もった瓦礫。 突き上げられたかのように地は掘り返され、住居は跡形もなく破壊されていた。 そして、瓦礫のもとに座り込んだ少女が一人。 「おい、ここで何があったんだ!?」 男は少女へと尋ねる。 少女は顔を上げる。そして、 「わたしには……もう何も残ってない。わたしに生きる意味なんて、ない」 ――巫女様と呼ばれていた少女は、そう呟いた。
42. cHiPs | |
2021/08/11 20:05 |
【レイズ】11話の前のお話 レイズは新しく貰ったガンを携えて、自室に戻り。 「ふぅ、こんな物ですかね」 手入れをしていた、レイズの為に造られたガン《テルラクス》は正にその性能とデザイン性も彼女に合っていた、 そんな素晴らしいガンを磨かない等と、そんな事はありえはしない。しかし 「それにしても、次の行き先があの場所ミドルの近くだったとは思いもしませんでしたね・・・」 レイズは次の依頼が、ミドルの近くとは思わず、嫌な考えが頭を過る。 「・・・『あの方』とやらが、ミドル周辺を如何にかする事等」 思わず、《テルラクス》を強く握りしめ。 「絶対に許しませんっ」 今度の依頼は。もっと気を引き締めなければならない。 レイズにとってそれ程にあの場所《ミドル》は、大切なのだから。
41. 雪翼依依 | |
2021/08/11 16:11 |
10話後の話です https://trpgsession.click/comment-detail.php?c=wintertsubasa&i=wintertsubasa_162866579871 日記のリンクで本当にすみませんでした。本当は直接ここで上げたいけど文字数が…文字数が…! レノンの二つ名についての話です。
40. あすか | |
2021/08/11 14:36 |
【シルファ・ベルフラワー】 戦いを見ていたある人達が言った。 「いやぁ、彼女が妖精を従えて戦場を舞う姿は美しい」 「その美しさは花のようだな」 「まさにその通り。名は通ってないが、さぞかし実力のある者でしょう」 ある時には話しかけられた。 「ねぇ君、名前の他、二つ名はあるのかい?」 「君みたいな美しい人は二つ名もきっと美しい」 めんどくさいですね、と一言返したい気持ちを抑える。 別に私は有名になりたくて強くなったわけじゃない。 「えー、二つ名ないの? じゃあこれとかどうかな、”妖精の美姫”。君に似合ってていいんじゃないかな」 たまにはと思って、盗賊ギルドご用達の別の宿に来てみればこれだ。 正直、興味はない。 ただこれからもこういった輩は増えてくるのだろう。有名になるとはそういうことだ。 (ゼノに言われなきゃ冒険者ランクなんて上げなかったのに) 悪態をつきつつも、どうすべきかを考える。 今後付きまとわれるよりは何か名乗ったほうがいいだろう。 「ふふ、ありがとうございます。でも私、もし名乗るならこれだというものを決めておりまして」 こちらでは新しい仮面をかぶりつつ、思い至った二つ名を名乗る。 「”谷間に咲く百合の花(リリー・オブ・ザ・バレイ)”。戦場という谷間であっても美しく咲く無垢な花」 百合の花が持つ花言葉。無垢や純潔。美しくも触れられない花という意味も込めて、と説明する。 「……いいじゃないか! 君にぴったりの名だ!」 目の前の男はそう言って、満足したかのように去っていく。 彼が今後、その名前を広めてくれるだろう。 だが、彼はこの二つ名の本当の意味を知らない。 無垢、純潔、そういった意味を持つのは”白い”百合である。 普段のシルファは黄色の髪、そして黒を基調とした服装をする。 黄色の百合が持つ花言葉は”偽り”。 黒の百合が持つ花言葉は”呪い””復讐”。 ”谷間の絶望で復讐を誓う”。”偽りの美しさの中の呪いのような憎悪”。 シルファが求めるのはただ一つの復讐のみ。それだけだ。
39. 白猫 | |
2021/08/11 11:51 |
10話の話の裏で 彼が気まぐれに受けた迷い猫を探してほしいいという依頼。 しかし、彼はもっと考えるべきだったのだろう。あの『並木亭』にある依頼なのだと。 裏路地の死闘にはじまり、7レベルスカウトを撒くような追跡、そして下水道での決戦。 明らかに猫とは異なるであろう、猫たちのボスを相手にし、その死体の上に立った時、彼はつぶやいた。 「・・・一人ってこんなにきつかったのか。最近、支援や後方援護があるのが当たり前だったからな」 「それにしたって、マスターの言う下水道掃除って、まさかいつもこんなのを相手にしているのだろうか」 「いや、確かに定期的に掃除しないと何が沸くか分からないか」 そうして彼は一匹の猫を捕まえながら下水道を去っていく。 「ああ、またみんなと組んで仕事がしたいな・・・」