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😶 ピース・メイカー それから どうして。もし。たら。れば。 何百回目かになる自問と共にスマホの画面に目を落とした。 そこには村で知り合った一人の少女のアカウントが映っていた。 もちろんそれに答えるものはなく、どんな答えを求めているのか自分でもわからない。 それでも自問を止めることができないで、しばらく一覧とトークの画面を行ったり来たりしたあとで画面を閉じ、思いつくままこの手記をつけている。 村から戻ってきた俺は、いろいろな人たちからあの時のことを尋ねられた。 家族から、職場の同僚から、古い友人から。 あるいははれ物を扱うように、あるいは訝しむように、あるいは気遣うように。 大丈夫か、何があったんだ、何かしてあげられることはないか。 その全てに俺は、わからない、と答えるしかなかった。 わからない。わからない。わからない。 自分でも自分がわからないのにどうして他人にそれが伝えられるっていうんだろう。 それが他人のことならなおさらだろう。 それでも問いかけずにはいられない。 どうして。もし。たら。れば。 あの時偶然同行することになった人たちと後日話すこともあった。 体に後遺症が残った人もいれば、五体満足な人もいた。 けれど話していると共通して、みんなどこかずれてしまったように思えた。 何度も聞いた話もあれば、はじめて聞く話も合った。 そのどれもが現実味がないくせに妙に心に溜まっていって、たとえばいま自分たちがいる「ここ」が、実は本当の何かの上にかぶせた布切れなんじゃないか、そんな風に思えてきてしまう。 職場では、肝が据わったと言われることが多くなった。 実際、同僚が口元を思わず抑えるような現場でも、あまり心が動くことがなくなった。 それは自分が本当の何かを目にしてしまったからじゃないだろうか。 すべてのピースがかちりとはまったと感じたあの時から、俺のやるべきだったこと、感じるべきだったこと、そんな何かが決定的になってしまったのかもしれない。 けれどもそれらは叶うことはなかった。 背中にずしりとした重みを感じる。 宙ぶらりんになってしまった俺は、あれからずっと、頭上の何かにかじりつきながら見えない足元に地面を探してもがき続けているんじゃないだろうか。 手記に戻ろう。 職業柄、いろんな人の手記を目にすることがある。 そんな中にときどき、誰にあてたものでもない、取り散らかっているようでいて妙に詳細な手記を目にすることがあって、そういう手記には何故か決まって引き付けられた。 彼ら彼女らがどうしてそんなことをするのか今ならよくわかる気がする。 彼ら彼女らは、書くことで自分をここにどうにか繋ぎとめていたのじゃないか、そんな風に今は思える。 いま、俺がこうしているように。 開け放した窓から風が吹き込んでカーテンを揺らした。 視界の端に白いレースがふくらんで踊っている。 笑い声が聞こえてきた気がした。 ーーーーーーーー 先日、Rounin様キーパーでこりかん様作「ピース・メイカー」に参加させていただきました。 いやあ、やられました。これがクトゥルフか! 実に7時間以上のセッションでしたが、それを感じさせないお話で、終わった後は眠気と疲労感以上に心に鉛の塊をずどんと残されました。 例によってネタバレできないので、あれがこうしたことも、あばばーをごぼぼーしてしまったことも、せいやそいやがわっせわっせだった衝撃も書けないのがもどかしくも何かアウトプットしないのは勿体ないような体験でした。 というわけで後日譚妄想です。 何が起きても最低値しかSAN値が削れず、逆にクリア報酬で初期値から20もSAN値が増えてしまった鋼メンタルな渋谷八郎太でしたが、狂わなかったのじゃなく、狂えなかった結果なんじゃないかという気もしています。 この世とこの世ならざるものの狭間が埋められないときに人は狂ってしまうのだとしたら、この世ならざる方にすっぽり心を置いてしまったとき人はどうなってしうまうんだろうという妄想でした。 また、今回はキャラクターとプレイヤーの差があることで難しく、けれど楽しかったセッションでもありました。メタ的にはこっちに行くべきなんだろうけど、キャラクターがそちらに行ってくれないジレンマ。それでも最後にはなんとかキャラクターがしたいだろうことをさせてあげられたかなあと思います。 その過程で寄り道や手間を増やしてしまって、同卓してくださったみなさんには申し訳ないなあと思いつつ、一緒にお話をくみ上げられたことへの感謝に堪えないです。 物部皐さん、木枯らしさん、デモさん、紫芋さん、そしてキーパーのRouninさん、本当にありがとうございました。シナリオ製作者様のこりかんさんにも感謝です。 またよければ遊んでやってください。
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