りちゃさんの日記 「鈴鳴祭で会いましょう! それから」

りちゃ
りちゃ日記

2020/07/28 21:10

[web全体で公開]
😶 鈴鳴祭で会いましょう! それから
うだるような残暑の中、今日も古書店なつめは開店休業状態だった。

僕は人が来ないのを良いことに、二年前一度も上手くいかなかった祭り囃子の譜面づくりに取り組んでいた。
膝の上では唯一の常連客である黒猫がくつろいでいる。

記憶を頼りに筆を走らせ、時には和笛で音の調子を確認する。
黒猫が尻尾で叩いてくるのを頭を撫でて構うが、心は譜面にくぎ付けだった。

何度か繰り返したがやっぱり何かがしっくりこない。
音程やリズムを感覚的には拾えているはずなのに、いざ譜面に置き換えようとするとどんな音階にも当てはまらなくなってしまうのだった。


煮詰まって伸びをするとそのまま後ろに倒れこんだ。
天井の木目を数えていると、腹まで猫が移動してくるのを感じた。
観念して笛を手放すと、手の先の方に積み上げられた手紙の束を見やった。
そこからは何枚かの写真がはみ出している。

写真を引っ張り出すと一枚一枚手繰っていく。
それは昨年の晩夏に訪れた村で記録だった。
神様の掌に抱かれた、ただひとつの音をなくしたあの村の。

夏草の生い茂ったバス停、空をぐるりと切り取った稜線。蝉の声が聞こえてきそうな夏草の道に提灯の列。
何度も恐ろしい目にあったはずなのに、半年も経った頃には夏の蜃気楼のように薄らいでいって思い出すのは他愛もないことばかりだった。
豪華な夕飯、風呂につかりながら眺めた夜空、アイスを頬張る男女、卓球対決にカラオケ大会。


ふと脳裏に音が浮かんだ。

写真を放り出してがばりと起き上がった。
寝床から叩きだされた黒猫が抗議の声を上げるのを無視して筆を走らせせる。
かつて聞いた音律とは似ても似つかなかったけれど、なんとなく確信があった。


譜を起こし終えるともう日が傾きかけていた。
気もそぞろで居間をぐるぐると歩き回っていると、玄関の方でバイクの止まって走り去る音がした。
郵便受けを覗くと手紙が一通届いていて、中には一枚の写真が同封されていた。
懐かしい顔が並んでいる。

蝉の声が止まり、一瞬の後また大合唱が始まった。


ポケットで携帯が鳴りはじめたが、相手を確認する前から心は山間の緑豊かなあの村に飛んでいた。

そうだ、鈴鳴祭に行こう。

ーーーーーーーー
先日、お水様キーパーでワタガミ様作の「鈴鳴祭で会いましょう!」に、歴史資料研究家の夏目 響(なつめ ひびき)で参加させていただきました。

このセッション、6月6日に申請してから丸2月近くずっと心待ちにしていたセッションでした。だって、鈴鳴祭で会いましょう!ですよ!タイトルが。こういうノスタルジックな舞台に弱いのです。内容の方も2日間かけてたっぷり田舎暮らしを堪能できました。NPCも可愛かったり切なかったり優しかったり怖かったり、よりどりみどりでキーパーさんは大変だなあと思いながらも楽しませていただきました。夏にさしかかろうかというこの季節にこの物語を味わえてほんとうに幸せだったなあと思います。

というわけで後日譚妄想です。
製作:譜面スキルを75%も持ち込んでいたのに4回くらいチャレンジして全敗だったのでたぶん生還してからも悶々と取り組んでいるのではという話でした。少しは恐怖的な後遺症を持たせようかと思ってずいぶん悩んだのですが、どうにも夏目が能天気で「きもっ」くらいで済ませちゃって壊れてくれませんでした。最近少しリアルSANチェックが鈍い気がする。集中せねば。ともあれ3人の愉快な同行者たちや村の人たちとお祭りの日々を過ごすのが楽しみです。

改めまして、木枯らしさん、ゆいさん、さかぜさん、そしてキーパーのお水さん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者様のワタガミ様にも感謝です。
またよければ一緒に遊んでください。
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