序章 二度目の喪失、託されたもの Part01
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登録日:2021/02/15 00:50最終更新日:2021/02/15 12:26 |
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59. ななせ | |
2021/02/21 01:45 |
よくもまあ、こんなエネルギーがでてくるものだ。 叫ぶスミレを見ながら、ダリはこれからのことを考えていた。 村は破壊の限りを尽くされ、辺りには無残な遺体が散乱している。テラービーストの残した腐臭も耐えがたい。 この場合の「一般に常識的な行動」とはなんだろうか、と考えてみる。叫ぶ娘を米俵のように抱え、知らん顔をして引き上げることはできなくもないが、この惨状を放置したらどうなるだろうか。いずれどこかから救援がやってくるのだろうが、それがいつになるかはわからない。 ダリ「……こんなところでアンデッドが大発生したら、かなわねえな」 つい先ほど遺言を聞き届けた、友人──ああそうか、彼女を友人だと思っていたのだ、自分は──の亡骸に目を遣って、思案する。 やはり弔いは要る。不死者となって再会するのは歓迎できない。 ダリは放心しているスミレに声を掛けた。 ダリ「おい、気が済んだら行くぞ。あっちの森の先に神殿があっただろ。どこの神様だったかは覚えてないが。そこへ状況を伝えに行って、そのまま帰る」
58. 尸 | |
2021/02/21 00:25 |
スミレ「…お、おかあ…さん…!?」 微笑んだ表情のまま、その眼から光が失われた母。 呼びかけながら身体を揺さぶるが、もう、自分の名前を呼んではくれない。 スミレ「ぅ…ぁあ…あ……」 スミレ「ぁああああああああああああぁあああああぁぁあああああ…ッ!」 怒り狂い猛る獣の咆哮。 絶望の淵の悲鳴。 スミレの内で渦巻いていた「何か」が爆発し、強烈な波動を伴う叫びとなり吐き出された。 周囲の木々が葉を落とし、地が震えた。 ――――――… それがどれほどの長い時間であったのか、または一瞬であったのか。 抜け殻のように脱力したスミレは、ただ、母を抱きかかえ涙を流していた。
57. たびがらす | |
2021/02/20 23:41 |
そして――。 カレン「スミレ・・・、世界にはいっぱい・・・、素敵なことだって、ある、から・・・。」 カレン「悲しいこと・・・、ばかりじゃ、ないから・・・。だから、あなたは・・・、長生きして、ね?」 苦しさを押し隠した精いっぱいの笑顔をその顔に浮かべ、そうスミレに言い残すと、カレンの身体から力が抜け――。 彼女は、帰らぬ人となった。
55. 尸 | |
2021/02/20 21:19 |
…母が懐から何かを取り出し、自分にその手を差し出す。 焦点が合わないながらも、自分の姿を探す母の蓮華色の瞳。 母の視界に入るよう、しっかりとその瞳を見つめながら再び母の手を取る。 その手に握られた小さな種… スミレ「…いもう…と…?」
54. たびがらす | |
2021/02/20 20:22 |
ダリの返答に、カレンは満足したようだった。 今度は、スミレの方に顔を向けて。 取り出した小さな種。それは―――。 カレン「あなたの、妹に・・・、して、あげて・・・?」 震える手でスミレに差し出される、形見とも言うべきもの。
53. ななせ | |
2021/02/20 19:41 |
ダリ「わかった」 親指でスミレを指し示して ダリ「これは持って帰ろう。放置した方がマシだったってことになっても知らねぇがな」 ダリ「悪いな。俺には助けられない」 スミレの方は見ずに言い放つ。 楽にしてやることはできるが、と言いかけてやめた。そんな権利も自分にはない。 それからふと、顔を顰めて ダリ「子供……たち?」
52. 尸 | |
2021/02/20 18:59 |
スミレ「…お母さん…!…だめ…!」 母の泣き笑いの顔に、自分を救うために命を落としたフレール、アネット、父の最期の顔が重なる。 ……嫌だ! 光の妖精に力を求め呼びかけるが、母の身体から流れる血は止まらず、内から感じる輝きが急速に弱くなっていく。 スミレ「…ダリ…!」 止めどなく両目から涙を流し、助けを乞う。
51. たびがらす | |
2021/02/20 18:17 |
カレン「ダリ・・・、子供「たち」、を・・・、お願い・・・!」 カレン「独り立ち・・・、できる、まで、で・・・、いい、から・・・、見守って、あげ、て・・・。」 泣き笑いの表情で、カレンは最後のお願い――遺言を、ダリに伝える。