Keiさんの日記 「灰色城綺譚、または我らが王の身罷りてで学ぶナラティブ入門のお話」

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Kei
Kei日記
2021/03/27 21:47[web全体で公開]
😶 灰色城綺譚、または我らが王の身罷りてで学ぶナラティブ入門のお話
ご機嫌よう。

TRPGの中には、ナラティブ系と言われるジャンルがあります。想像ですが、ナラティブ系のシステムやシナリオって、初めて触れる方には、どうしていいか分からなかったり、うまくいくとは思えなかったりするのかと思います。わたくしも、かつてナラティブ系のシステムに初めて触れた時、それはレディ・ブラックバードやワンダー・ローズ・トゥ・ロードだったりしたのですが、どうしたらいいのか分かりませんでした。もしくは、WoDやヒーローウォーズのような初期のナラティブ系と言われるシステムでの、ナラティブなお話の作り方が分かりませんでした。

ですが、ナラティブ系TRPGって、遊び方さえ分かってしまえば、楽しいです。そこで、今回は、ナラティブ系TRPGに入門する二つの方法を紹介しましょう。

一つ目は「灰色城綺譚」です。

「灰色城綺譚」はGMが必要でPLが3人限定(シナリオも必要)というところが若干プレイの障害になるかもしれません。ですが、システムも付属のシナリオも大変に良く、機会があれば是非お試しいただければと存じます。

「灰色城綺譚」では、開始時にスタート時点での状況と、ハンドアウトが二つ(3つの場合もあります)与えられます。これは厳密にはルールではないのですが、約束として、PLはプレイ中にハンドアウトを自ら公開することが求められます。

一方で、ルール的には、PCやシナリオの舞台は、良い感情と悪い感情で表現されます。そして、悪い感情が勝ちやすいようになっています。それをどのように表現するかは、PLに任されます。

シナリオ中に提示された謎に回答が与えられることもありません。

それでもお話はRPによって進行しますし、PLがどのような過程でハンドアウトを公開するのか、場面にどれくらい悪意が進行しているのかによって、お話の流れは変わります。ハンドアウトや謎のような要素はGMが意図した物語上のギミックとも言えますが、それが、どのように物語に作用するのかは、PLに委ねられています。

そして二つ目は、いままさにわたくしたちも遊んでいるのですが「我らが王の身罷りて」を挙げます。

「我らが王の身罷りて」はGM不要です。PLは3〜5人。シナリオも必要ありません。おそらく、他の(ナラティブでない)TRPGに慣れている方には、ルールを読んでもよく分からないかもしれません。ルールブックにはTRPG的なルールは書かれていません。けれど、それでも必要なことは全てルールに書かれています。

それではルールには何が書いてあるのかというと、ゲームスタート時の状況と、何ができるのかという選択肢が与えられています。あとは一応の勝利条件も。PLは順番に選択肢を選んで、シーンの描写や演出やRPを行います。ルールに反せず、選択肢に矛盾しない限り、他のPLと相談しても構いませんし、どんな風に描写や演出やRPをしても構いません。

PCが置かれている状況や、時には意志さえも、他のPLに委ねられる面もあります。そういった状況の積み重ねが、物語になります。

これは、わかりやすく表現すれば、「我らが王の身罷りて」というシステムとシナリオが一体になったTRPGを、何度でも、そう、何度でも遊べるように構成されたものです。先日、同じシナリオを複数回遊ぶという話題がありましたが、それとも違います。物語が進行するためのギミックとしてのネタバレは、ここにはありません。というか、同じ物語にはなりません。物語が進行するギミック要素があるとしたら、それは、GMが意図するものではなく、PLの同意によって形作られるものです。

同じシナリオでもPLのRPによって違う物語になる、と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。そういう方にも、お試しいただきたいです。同じ物語にはならないって、どういう意味なのか。

物語の物語らしさって、一体何によって生まれるのでしょう。

非常に初期のTRPGでは、それは、ルールの運用によって偶然生まれるかもしれない程度のものでした。TRPGのルールは、物語性とは無関係のところにありました。それから、世界がやってきました。たくさんの、いまにも物語を紡ぎ出しそうな世界が描かれました。次にやってきたのは、物語を紡ぎ出しそうな特定の状況を描くルールでした。けれど、そこにあるのはあくまでルールや設定であって、物語ではありませんでした。

ナラティブ系TRPGって、結局のところ、TRPGが物語を紡ぎ出す仕組みの一つです。時にゲームマスターやシナリオがなくても、特定の範囲の物語を紡ぎ出すことはできるし、そうして紡ぎ出された物語も十分に面白いものです。
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レスポンス

wpeke
wpekeKei
2021/03/27 22:28[web全体で公開]
> 日記:灰色城綺譚、または我らが王の身罷りてで学ぶナラティブ入門のお話
ナラティブ系のお話と、TRPGの流れのお話は簡潔ながらすごく納得のいく内容でした。
最近のシステムは ナラティブの長所を活かしてGMの負担を減らしつつPLが何をしたらいいかわからない ということも防ぐデザイナーの工夫が見られる作品も多くて、この趣味を続けていてよかったな~ と思うことしきりでございます。

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