ぱむださんの日記 「ルッキズムとリアリティ」

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ぱむだ
ぱむだ日記
2024/08/01 13:50[web全体で公開]
😶 ルッキズムとリアリティ
TRPGプレイヤーの一部には、なぜか「容姿がいいとあらゆることがうまくいく」という信仰じみた信念を持っている人が一定数います。
回避判定に成功して「イケメンだから当たりませんでした!」って笑い飛ばしたりするような、「分かっている」方向性じゃなくて、何かしら行き詰まると「あとは顔の良さでどうにかなりませんか?」と真顔で言いだす感じです。

現実に生活していて、綺麗な人を目にすることはしばしばあると思います。
綺麗な人は綺麗であることで確かに得をしていると思いますが、その利点が常にその人本人のコントロール下にあるかというと疑問です。
それに関しても「(生まれつき可愛いから)自分の可愛さをよく知ってる」という設定を山ほど見てきましたが(これなんでみんな同じ書き方するのか不思議なんですが元ネタかなんかあるのかな)、それはかなり一元的な……つまり、可愛くない人から可愛い人を見たときの、可愛い人への偏見を含んでいる物の見方だと思います。人はどこまで行っても自分であり、自分から逃れることは出来ませんが、だからと言って知り尽くし、使いこなしているということにはならないはずです。
容貌について明確なデータがあるゲームであるGURPSでも書かれているように、美しい容姿であれば人さらいに目をつけられたり、あるいは顔を怪我してせっかく支払ったCPをむざむざ失う危険が常に付きまといます。そうでなくても、単純に顔を覚えられやすくなることがゲーム的に不利に働くこともあるでしょう。
こういったゲーム的な要素を一旦抜きにして考えるとしても、現実社会で「大した交流もないのに顔がいいからえこひいきして便宜を払ってくるやつ」はたいていろくな人間ではありません。そのえこひいきに乗ってうまい汁を吸えば、いずれそれ以上の代償の支払いを求められるでしょう。

以前、学校の先生や用務員さんとの交渉を、容姿の良さでなんとか通したい、と言われたことがありました。
そもそもシナリオではこのNPCたちとの交渉は想定されていないのですが、この時点で知ってることに対して隠す必要があるわけでもなく、敵対もしていないので、先生たちは生徒の疑問には答えられる範囲で答えるはずです。
ダイスを振る必要はなく、何を聞きたいかを具体的に口頭で伝えてくれれば、NPCがどんなふうに反応するかわかりますよ、と返したのですが……

PL「でも、顔が良かったら態度は変わりますよね?」
私「確かにあなたは可愛いですが、可愛いからと言って態度を変える先生ではなかったようですね」
PL「普段見せない可愛い顔を見せて誘惑する!本人にはその気はないけど誘惑してる!」
私「先生はごく普通の先生なので、生徒の悪ふざけにはいちいち取り合わないですよ」
PL「でもふつう、特上の美少女が身近にいたら……」
私「いたら、その可愛さにもすぐに慣れっこになって、普通の反応をするようになるでしょうね」

ちょっとした押し問答になって、結局他のPLが質問する形になったんですが……
もちろんこれ、PLの気持ちも分からないではないです。「NPCに聞くことを具体的に言う」というのは、部外者に言うべきでないことを言ってしまって不利な状況を引き起こすトリガーになりかねないからです。先生を篭絡して黙らせ、自分に都合の良いことしかしない状態にしたいというのは、まあ自然な心理である気もします。先生は敵対してないから答えられることには答えてくれるよ、とここまで言えばPLの疑心暗鬼を引き起こすことにはならなかったかもしれません。
ただ、私としては意地悪をしたつもりはありませんでした。他者との情報のやりとりには常にリスクが存在するし、絶対的な安全圏から情報だけを獲得できる権利なんてどんなビルドをしたPCにもありません。単に「質問したいことを口頭で具体的に明言する」というのは、ゲームを冗長にするほどのリスクとは言えないでしょう。

容貌がいいことが有利に働くことはもちろん現実にありますが、ゲーム的な利点として常に活用できるほど有利かというと、様々な要素から疑問があります。
しかし、上の例でもあったように、容貌が良いことにこだわるPLは「こんな美人がそばにいたらふつう~」という言い方をよくします。
対人的な場においては、常に美人が理不尽なほど得をするのがリアリティがある、というわけですね。

正直、今の若い世代にとってはそれがリアルなのかもしれない、とは思っています。

様々なメディアの普及からごく普通の中高生まで容姿を常に評価され、見定められる時代になり、ルッキズムは苛烈で極端なものになっています。顔さえよければ全部うまくいってるのに、あいつ顔だけなのにうまくやりやがって、と思いながら生きてる若いPLが実は多いのかもしれません。

しかし、ある程度生きてきた大人からすると、そんなことはないから大丈夫だよ、と言いたくなります。

少なくとも、ゲームの中ではその極端なルッキズム世界観で生きて行かなくていいんだよ。
容貌のデータがあるゲームでも、それが判定に影響するかどうかはGM(KP)が決められるから、常に容姿で評価されることに怯えなくていいんだよ。
美形も不細工も、化け物はみんな頭からぺろりといったりぐずぐずに溶解させたりひき肉にしたりしてくれるから大丈夫だよ。
ゲームの中の世界で、その報われなかった世界の「ふつう」にこだわらなくていいんだよ。

リアリティというのは、生きる世界によって異なると思います。
人は見たいものしか見ないので、全く事実ではないことを「ふつう、こうだ」と思い込むこともありえます。
たまに、その「リアリティ」に、その人が抱えている傷が見えた気がして、ちょっと胸が痛むことも……
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レスポンス

聖岳生馬
聖岳生馬ぱむだ
2024/08/01 15:08[web全体で公開]
> 日記:ルッキズムとリアリティ

「GURPS」で容姿に有利な特徴としてキャラクターポイントを支払っていたら相手の態度に関して、良い反応が返ってくるだけでもいいんじゃないでしょーか。
もちろん容姿だけで不可能なことが可能になったり、相手の職業意識を無くさせるなどという(ルール外の)ことは発生しませんがw

現在のWebの発達で子どもの環境も大きく変わりですよね。
クラスで一番イラストが上手くても、すぐにWEBコミュニティーで、最後は世界で上手い人と比べられる。
昔だったら一芸でクラス中からリスペクトがあったんですが。

みんな、そんな息苦しさから解放されてぐずぐずに溶解されたりひき肉にされたりしよーぜ!
散弾銃
散弾銃ぱむだ
2024/08/01 14:54[web全体で公開]
> 日記:ルッキズムとリアリティ

コメント失礼いたします。
凄く興味深く読ませていただきました。

もし良ければ、そういった「見た目の力」を強調するPLは、異性/同性PCのどちらが多いのか、年代はどんな人が多いのか、その他共通する特徴はあるのか、ぱむださんの見てきた範囲、主観でいいので是非聞いてみたいです。


>美形も不細工も、化け物はみんな頭からぺろりといったりぐずぐずに溶解させたりひき肉にしたりしてくれるから大丈夫だよ。

凄い説得力ですね。大丈夫だけど大丈夫じゃない。

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