Keiさんの日記 「とても初期のストーリーゲームについてのお話」

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Kei
Kei日記
2021/12/29 00:00[web全体で公開]
😶 とても初期のストーリーゲームについてのお話
老害昔話シリーズです。記憶をもとに書いています。話半分未満のつもりでお読みください。当時の他の資料をご参照ください。

ご機嫌よう。

皆さんは当然ながら、TRPGで物語が語られるとお思いでしょう。ですが、初期のTRPGは、少なくともシステムとしては、それほど明確にストーリーを志向しているわけではありませんでした。

もちろんシナリオはありましたし、このシナリオのストーリが良いという評価もありました。ですが、これはとてもとても初期のTRPGシーンに限ったお話ですが、市販されたいわゆるストーリー志向のシナリオというものは必ずしも評価が高かったわけではありませんでした。プレイの結果たまたま生まれた物語をそのままシナリオにしたから、のように評価されることもありました。このようなことがあって、TRPGは小説ではないことが徐々に鮮明になっていきました。

一方で、そういった「たまたま生まれる物語」が楽しいことも知られるようになりました。それなら、どうしたら物語が生まれるのでしょう? 当時の答えは、世界設定だったり、特定の状況を描く特定のルールだったりしました。

さて。

物語の楽しみの一つに、「物語を語る楽しみ」がありました。そう。ナラティブな楽しみです。わたくしが知る限りでは、80年代終わり頃から「物語を語る楽しみ」をシステムに取り入れる動きがありました。

例えば、Prince Variant -- the Storytelling Game というゲームがありました。作者はあの RuneQuest のグレッグおじさまで、あのクトゥルフの Chaosium から発売されました(Chaosium はもともと、RuneQuest を販売するためにグレッグおじさまが興した会社です)。これが、ストーリーテリングを銘打った最初期のゲームではないかと存じます。そして、今のナラティブにも通じるようなルールが搭載されていました。

Prince Variant では、GMがプレイヤーを指名して、このシーンでのGMを代行するように指示することができるとルールに記載されていました。同時に、プレイヤーも自ら「このシーンのGMをする」と手を挙げることもできました(プレイヤーが自ら挙手する場合はGMの許可が必要でした)。そのシーンに適したプレイヤー、というような記載がありましたが、それでも、プレイヤーがPCの視点を超えて物語を語ることができることが、こうして示されました。

こうした流れは90年頃に日本にも紹介されました。門倉直人氏がウォーロック誌上で考察を展開し、その成果は Beyond Roads to Lord というゲーム(のサプリメント)に反映されました。複数GM、さらにはGMなしプレイの提案すらありました。

ですが、ほとんどのプレイヤーはこう思いました。そんなGM役を投げられても困る。

そして、GMもこう思いました。プレイヤーに投げたらシナリオがめちゃくちゃになる。

どちらも共通して、うまくいくはずがないと考えました。

いまから振り返ってみれば、単に遊び方の例が圧倒的に不足していただけのようにも思えます。門倉氏の説明は概念的なものに終始して実践的な例がありませんでしたし、追従する人もいませんでした。そうして、実践を試みた人々は、だいたいこのような結論に至りました。リレーキャンペーンと同じじゃない? 物語を描き進めるというプレイヤーの役割が「発見」されるのは、まだまだずっと先のことでした。
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レスポンス

セス・メイソン(CoC7PC名)
セス・メイソン(CoC7PC名)Kei
2021/12/29 13:30[web全体で公開]
> 日記:とても初期のストーリーゲームについてのお話
コメント失礼します。CoCを主にプレイしてます。
世界観という絶対ルールの中であらゆる試行を許された誰かを主観とした物語。
GM/KPにとってはPLの提案で調整をして奇策と認めたり無駄な行動と拒否したり、駆け引きをする。
TRPGはPLが工夫を凝らして提案し、受けたGM/KPが有効性を(強制的に)考え結果を出すという、
発想と予測を結び付けられる面白いジャンルと思います。
GMなし、今ならAIに任せるイメージでしょうか、パターンに無い新たな提案をするたびに結果予測の算出に時間が割かれて、応答に時間が掛かりそうです。
ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツKei
2021/12/29 00:39[web全体で公開]
> 日記:とても初期のストーリーゲームについてのお話

今から考えると、昔のゲームグラフィックス誌で読者の爆笑を誘っていた「カオスの部屋」に出てきたプレイヤーたちって、「ナラティブ」なゲームの先駆者だったかもしれませんな……特にRtoLで市販シナリオを無視して大悪党のピカレスクロマンを生ききったジャークさんとか……。
聖岳生馬
聖岳生馬Kei
2021/12/29 00:04[web全体で公開]
> 日記:とても初期のストーリーゲームについてのお話

おお、素晴らしい出だしですね。
曲がりなりにも、その時代にTRPGを知っているだけにどう続くか興味津々です。

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