ポール・ブリッツさんの日記 「ミステリとTRPGの相性はそれほどいいものだろうか」

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ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツ日記
2020/08/21 18:05[web全体で公開]
😶 ミステリとTRPGの相性はそれほどいいものだろうか
ミステリについて考えていたらなんとなくもやもやしてきた。

そもそも、ミステリの面白さは「推理プロセス」と「意外な真相」によるところに多いわけだが、この「推理」というものが曲者で、ぶっちゃけこの「推理」というものは、「限られたデータを再構成して事態の真相に至ろうと試みる行為」なわけだ。

それを徹底した一つの理想形がいわゆる「安楽椅子探偵」というやつで、プリンス・ザレスキーみたいに、家へやってきたワトスン役の話と新聞記事くらいの極度に限定された情報から、自分の知識と「推理」だけでもって、部屋から一歩も出ずに事件の真相を暴いてみせるような探偵であるが、NPC設定やストーリーをじっくり作りこむタイプのGMの作った「推理シナリオ」でPLにそんなことをやられたら、GMは「推理はわかったからとにかく外へ出てくれよお」と泣くしかあるまい。PLの語る真相が本当に当たっていたらまことに気の毒である。

わたしの知っている中で、ボードゲームとTRPGとの境界線上にある中でもっともすぐれたミステリゲームは、二見書房のゲームブック「シャーロック・ホームズ10の怪事件」であるが、ロンドン市内を歩き回って、聞き込みをしたり現場検証をしたりと手掛かりを求めて捜査するこのゲームで「勝利条件」を満たすためには、「ホームズ以上に限定された情報から」「全ての事実を見破らなければならない」という「足の探偵」を全否定する恐ろしいゲームであった。たとえば、「絵の具についての知識」が必要になるシナリオでは、「その情報を手に入れてから、専門家に聞きに行くパラグラフに行く」というプレイをしたら負けるのである。正しいプレイ態度は、「絵の具が事件の鍵となる」と示唆された段階で、現実世界のPL自身の家に一冊くらいはあるだろう百科事典を引き、絵の具の情報を頭に入れ、それをもとに推理を展開する、というものなのだ。一つのシナリオにつき80個くらいはあるパラグラフのうち、「勝ち」に行くのならそのうち数個くらいしか読んではいけないのである。TRPGのセッションでそんな態度で自分の「推理シナリオ」に臨まれたら、世界構築とシナリオ設定をガッツリやるタイプのGMにとっては悪夢だろう。

だからといって、GMの提出する情報のすべてを、なんであろうと書き留めて、行ける場所はすべて訪れ、会うことができる人間には全員に会い、その全員から持っているすべての情報を引き出すまで、情報不足であるから絶対に真相の指摘を行ってはならない、そして情報さえそろったら真相は自明ですよ、というシナリオがあったら、「名探偵」になりたいPLにとっては「そりゃないんじゃない」と思えるだろう。「推理」することにより、「誰よりも早く」真相に到達するカタルシスが、PLが名探偵をやりたがる原因なわけだ。特に、エラリー・クイーンの国名シリーズなどのファンで、「読者への挑戦」のページに差し掛かるとそこで本を閉じてガチで考え出すタイプのやつらはそうである。しかし、推理クイズとか小説とか「金田一少年」の懸賞応募ならまだいいが、TRPGにはそこまでガチ考えをする時間的余裕というものがセッション中には存在しない、そのうえ、昔のクイズ番組「マジカル頭脳パワー」の、セットをこしらえての推理問題みたいに、作者が「セッション中に許される程度の範囲内で一定時間考えれば、特に捜査の知識がなくとも普通の人間なら解ける」ような謎を提出すると、たいていは、解いたPLからは「なんだ簡単すぎるじゃん……」というリアクションが返ってくるのだ。GMはPLに「アハ体験」をしてもらいたいだけなのに。

「推理シナリオ」について考えれば考えるほど、うまくGMするのは困難なような気がしてきた。単純に「パズル」を出して解かせればいいのかというと、それも違うと思うしなあ。すべてのピースがすべて収まるところにぴしりと収まる快感と、その収まったピースが一見何の変哲もない小さな要因により一気に崩壊し、また新たなピース収めの方法を知恵を絞って考える、という、イギリスミステリみたいな展開の面白さを理解してもらうのは、もっと狭き門だろう。よく考えたら、ミステリの世界においてすら、何か事件が起きた時、「推理」によって「推理合戦」などというめんどくさいことをするのは、たいていの場合「なんとか大学ミステリ研究会」みたいな肩書を持つ学生集団くらいじゃないか。「推理合戦」は、そのくらいの設定をつけないと、小説内でもリアリティをもって書けないのか。そういや東野圭吾先生も、「いかにして密室を作ったかという謎」について、「そんなこと犯人を見つけてから聞きだせばいいじゃん」と某作の登場人物に語らせてたなあ。

うーむ……。

飯食おう。
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レスポンス

ワース
ワースポール・ブリッツ
2020/08/22 00:28[web全体で公開]
> 日記:ミステリとTRPGの相性はそれほどいいものだろうか
推理そのものだけをゲーム要素にするとうまくはない気がしますね。本なら予定調和は可能ですが、現実に名探偵がいないのも案外trpgと同じく予定調和がないからかもしれませんね。
推理好きには怒られてしまうかもですが
  ある管理値が閾値を超えたらヒントor部分回答を与える
  ある推理で進行したが、間違えたとわかったら夢オチのように、それは頭で考えていただけとして、時を戻す
  リソース消費で、探偵者っぽいスキル(事件に似た過去の事件を思い出す、床に落ちているもの発見LV2、協力者が現れたetc)を駆使して 制限時間内に事件に迫る
とか、それっぽい感じにはできそうだとは思います。
  推理物trpgに何を求めるかは研究しないといけないかもですが。
wpeke
wpekeポール・ブリッツ
2020/08/21 20:16[web全体で公開]
> 日記:ミステリとTRPGの相性はそれほどいいものだろうか
いえ  よくありません。
なぜなら TRPGにおける「真実」とは 所詮「GMの考えた真実」にすぎないからです。
もし シナリオが完璧に作られていたとしても、それを正確に運用できなければ意味ないし。
例えばA「GMの考えた真実」とB「PLの考えた推理」で、いかにBの方が論理的に整合性が取れていた
としてもTRPGのセッション内では Aが真実なのです。それをくつがえしたら、TRPGの根幹がくずれて
しまいます。 では・・それがいいのか?
もちろん、参加者が楽しければいいのです。例え「GMの考えた真実」が穴だらけでも、それにツッコミをいれながら
みんながセッションを楽しめたらB「PLの考えた推理」の正しさなんて 二の次 それがTRPGの本質です。
そして 私はそれだから TRPGが好きなんだと思います。
もしBにこだわるPLがいたら「自分の知的優秀さを他人に示したいなら、TRPG以外ののゲームの方がいいよ」
・・と言いたいですね。


KAL666
KAL666ポール・ブリッツ
2020/08/21 19:31[web全体で公開]
> 日記:ミステリとTRPGの相性はそれほどいいものだろうか
プレイヤーは思ったほど情報に気づけないことが多いです。
また、発想がわかないから、判定もできない。
でも、決して頭が悪いとか下手なプレイヤーとかじゃないんです。
やっぱり、客観的にテレビでみるのとは違うんですよ。
そして、それはGMも同じ。
思ったほど分かりやすいヒントがだせない。やるとあからさまになったりしますね
蝉丸
蝉丸ポール・ブリッツ
2020/08/21 18:20[web全体で公開]
> 日記:ミステリとTRPGの相性はそれほどいいものだろうか

まあ、息抜きにフタリソウサでもやると良いですよ。
むしろやりましょう、うん。

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