Keiさんの過去のタイムライン
2021年12月
Kei⇒聖岳生馬 | |
2021/12/30 17:37[web全体で公開] |
聖岳生馬⇒Kei | |
2021/12/30 15:36[web全体で公開] |
> 日記:GMがいないTRPGについてのお話 素晴らしい話をありがとうございます。 長い(俯瞰)視点で振り返るのは物事(歴史)にとって大事ですね。 思い出しますのはRPGの日本語紹介と展開に影響がありました多摩豊さんの文章でしょうか。 当時は第2世代RPGとか第3世代RPGと言葉を振られていましたが。 思えば遠くに来たもんだ。 (本文とは関係無い感傷) 「日本語訳はありません」とか「絶版です」の多さよ。 多くの先祖の活動の上に、現在のTRPG作品は立っておるんですなぁ。
Kei | |
2021/12/30 15:00[web全体で公開] |
😶 GMがいないTRPGについてのお話 この一年くらいで学んだストーリーゲームについてのわたくしの解釈です。話半分未満のつもりでお読みください。他の資料をご参照ください。また、個人的な事情により、海外システムの話がメインとなりますのでご了承ください。 ご機嫌よう。 いわゆるストーリーゲームについての最終回(のつもり)です。当初はこんなに長々と書くつもりはなかったのですが、ここまでお読みくださった皆さまありがとう存じます。 さて、90年頃からTRPGはGMがいなくてもプレイできると考えられてきたことはこれまでに触れた通りです。GMがいなくても遊べるという議論はその後も細々と続いていました。当初は全員がGMの役割をシーンなどで分けて行うという風に考えられていましたが、最終的に到達したのは、全員にGMの権限と責任を委譲するということでした。 そのためにまず必要だったのは……そう、プレイ中のルール裁定を不要にすることでした。ですが、GMには他の役割もあります。物語を牽引し、ゲームを運営することです。では、残るこれらの役割は、GMがいないとできないのでしょうか? 全員が等しくそうした役割を負えば良いのではないでしょうか? 一方で、適切な質問さえできれば良いという重大な発見もありました。 その意味では、GMなしという言い方は適切ではなく、全員がGMと言った方が正しいかもしれません。 ともあれ、09年になるとフィアスコが登場しました(作者のジェイソン・モーニングスター氏はこれに先立つ07年にもGMなしのタイトル「青灰のスカウト」を発表していました)。フィアスコは三流の小悪党が穴だらけの犯罪計画を立てて失敗し人生から転落するというTRPGですが、それに至る登場人物の人間関係や舞台を最初に全てダイスで決めるという特徴がありました。対してゲーム中に判定は一切なく、必要なのはプレイヤーの同意であって、ルールの裁定というGMの役割は不要となりました。フィアスコにはシナリオネタ帳に相当するプレイセットがありますが、どんな物語になるかは(最後に全員が痛い目に遭うかどうかも含めて)プレイヤー次第で、予測不能です。 10年代後半になると、基本的な物語の進行方針が与えられ、詳細はカードの指示に従って共同体の終わりを描く「ダイアレクト」(こちらもゲーム進行中に判定が一切ありません。どのような物語であってもカードは共通で、それで十分に機能します)や、ルールに記載されている選択肢を選び質問しあうことで王位継承をめぐる争いを描く「我らが王の身罷りて」が登場しました(判定は最小限で、それもトランプの大小という疑問の余地のないものです)。 ダイアレクトにはシナリオネタに相当するバックドロップがありますが、ゲームの開始時に全員でその質問に沿う形で舞台を作成しますし、(最後に自分が属する共同体が滅びる以外)何が起こるか分かりません。我らが王の身罷りては次の王家をめぐる貴族の陰謀や争いを描きますが、必要なことは全てルールに書かれていて、このルールを運用するだけで王位継承をめぐる争いを完全に描くことができます。それでいて、具体的にどんな物語になるのかは毎回想像がつきません。 また、先日ご紹介したPbtAからも、判定に関するルールを排除し、プレイヤー間でルールに記載された質問をしあって他のキャラクターとの関係を深めることで物語が進行する Belonging Outside Belonging というシステムが派生しました。 このように、シンプルなルールやランダマイザで示された指示や状況や質問からプレイヤー自身が物語を駆動する手法が確立されていきました。そこではもはや、GMもシナリオも必要なくなりました。 一方その頃、日本では秘匿ハンドアウトやダブルハンドアウトといった仕組みがいよいよ完成形となったり、銀剣のステラナイツのような「超RP重視システム」が産声を上げ、また、鵺鏡のようなストーリー展開を重視したシステムも独自に生まれていました。これらも、もちろん楽しいものですし、物語の描き方の地平を拓きました。 とまれ。わたくしが初めてTRPGに触れた頃からは想像もできなかった遊び方がどんどん発展していくのに触れるのはとても楽しいことです。普段決まったタイトルしか遊ばない方や、GMやシナリオという概念に慣れ親しんでいる方も、こんなTRPGもあるんだなって興味を感じていただければ幸いです。 このシリーズで触れたゲームたち クトゥルフ神話TRPG (1981):特定の状況を描くシンプルなルールが物語になることが発明されました。ご存知のとおり、最新版を日本語で読めるだけでなく、日本国内で最もプレイ人口の多いゲームとなりました。 Pendragon (1985):PCの感情を物語に反映することが発明され、その後のライフパスにつながりました。順調に版上されていて、最新版は公式サイトから購入可能です。日本語訳はされていません。ごく近い将来に改版されるという噂があります。 Prince Variant -- the Storytelling Game (1989):GMを他のプレイヤーに任せる発明がされました。絶版ですし日本語訳されていません。eBayなどでデッドストックまたは中古を見つけることができますが、今更入手する価値はないかと存じます。 Beyond Roads to Lord (1989) / Far Roads to Lord (1993):複数GMやGMなしの提案がされました。遊演体から発売されていましたが、絶版です。特にFarには大変なプレミアがついてしまっているようです。 World of Darkness (1991):ステータスの描写と物語性の関係が完成形となりました。シリーズの一部はアトリエサードから日本語訳されていました。後継のChronicles of Darkness シリーズは新紀元社からごく一部のみ発売されましたが、共に絶版です。WoD シリーズはその後版上げされ、最新版は公式サイトから購入可能です。当然日本語訳はされていません。 Fudge (1992):どのようにプレイヤーに物語を語らせたらうまくいくか発明されました。公式サイトからダウンロードできます。日本語訳はありません。 FATE (2003):Fudge で発明された方向性が完成形となりました。公式サイトからダウンロードできます。日本語訳はありません。 Powered by the Apocalypse:これに先立つ Apocalypse World で、適切な質問が物語を駆動し、その質問はルールで決めることができることが発明されました。これを利用して様々なテーマと質問の組が発表されて百花繚乱の様相となりました。シナリオは不要になりました。ルールの裁定についてよく議論の元となる難易度設定も不要になりました。DrivethruRPGでさまざまなPbtAタイトルを購入できます。日本語訳されているものはありませんが、近日中にPbtAタイトルの一つ、Dungeon World 日本語版が発売予定という噂があります。インディーズということもあって、ジェンダーや戦争など通常のTRPGでは深く踏み込みにくいテーマを題材にしたタイトルも多いことも特徴です。 Belonging Outside Belonging:PbtAで発明された質問と答えで物語を駆動する方法がさらに押し進められ、判定もGMも不要になりました。DrivethruRPGやItchでさまざまなBOBタイトルを購入できます。公式に日本語訳されているものはありませんが、BOBタイトルの一つ、Wanderhome は有志による非公式日本語版プレイキット(公式許可済み)が無償公開されています。PbtAと同様に、ジェンダーなどに踏み込んだタイトルなどがあります。 フィアスコ (2009)、青灰のスカウト (2007)、ダイアレクト (2017)、我らが王の身罷りて (2018) では、GMやシナリオや判定を不要にするさまざまなアイディアを現実のものとしています。それぞれ日本語版が発売されています。 Wonder Roads to Lord (2010):全てを言葉で描き解決するという一つの方向性が示され、GMもシナリオもないプレイの方法が提案されました。エンターブレインから発売されましたが、現在は絶版のようです。 鵺鏡 (2016)、銀剣のステラナイツ (2018) については触れ直すまでもないでしょう。 最後に、このシリーズで取り上げにくかったタイトルに触れておきましょう。Paranoia です。Paranoia とナラティブとの関係はわたくしには掴みかねるところがございましたが…… ■■■■■ 警告!:これより先はセキュリティクリアランス紫外の情報が含まれます ■■■■■ ……楽しませている間は生き残ることができるというルールなど、実はこっそり影響を与えたのではないかと感じていますし、最新版のリブーテッドではGMは判定しないというルールが導入されていたり、よりナラティブを感じさせる気もしております。識者の方による解説などお待ちしています。また、Traveller など一部の旧来のタイトルは、ストーリーゲームの手法を積極的に取り入れた方が上手くいくのではないかという印象を受けております。
Kei⇒wpeke | |
2021/12/30 11:44[web全体で公開] |
wpekeさま、ご機嫌よう。 一時期の Chaosium が神がかっていたという件については完全に同意ですわ(といっても、わたくしが実際に触れたのはRQシリーズとCoCシリーズだけですが)。そういえば Elric! には世界の状況を表現するルールがあったように伺っておりますし、これも物語を生み出すルールと言えたかしら、などと想像しております。
Kei⇒聖岳生馬 | |
2021/12/30 11:43[web全体で公開] |
聖岳生馬さま、ご機嫌よう。 Aの魔法陣がいまでいうナラティブに近い遊び方もできて、しかも一時期(局所的に?)盛り上がったというような話をわたくしも伺ったことがございました。ですが、触ったことがございません。Webで公開されている版もわたくしには読みにくく……(。
wpeke⇒Kei | |
2021/12/30 01:39[web全体で公開] |
> 日記:特定の状況を描く特定のルールが物語を生み出すお話 ちょっと日記の趣旨からははずれますが、 Chaosium は CoCやルーンクェストで有名? ですが、ラリィ・ニーブンの「Ringworld」や、「ストームブリンガー」だけじゃなく、「 Hawkmoon」とかのeternal championsのゲームも展開していて、一時期は本当に新作が楽しみな会社でしたね~。 eternal championsはがんばって続けてほしかった。「Corum」もだしてたみたいだけど未見なんだよなぁ。、
聖岳生馬⇒Kei | |
2021/12/30 00:18[web全体で公開] |
> 日記:プレイヤーが物語を描き進めるTRPGについてのお話 >言葉で全て表現するという方向性 他にも『Aの魔法陣』という作品がそのような方向性を持っているようです。 作品の最初の発表は2004年なので、そういう流れがあったみたいですね。
Kei | |
2021/12/30 00:13[web全体で公開] |
😶 プレイヤーが物語を描き進めるTRPGについてのお話 この一年くらいで学んで解釈したことをもとに書いています。話半分未満のつもりでお読みください。他の資料をご参照ください。また、個人的な事情により、海外システムの話がメインとなりますのでご了承ください。90年代におけるストーリー志向の国産TRPGとして深淵を思い出す方もいらっしゃるでしょうが、わたくし深淵に触れておりませんので、識者の方の解説お待ちしております。 ご機嫌よう。 前回は、特定のルールに従うことで特定の物語が生まれるという発明について書きました。今回は、特定のルールを超えて、どうしたらプレイヤーが物語を描くのか、という発見についてお話しします。 90年代中頃に、Fudge というゲームが生まれました。わたくしは寡聞にして存じませんでしたが、後の FATE に繋がるゲームだったようです。そして、Fudge は、プレイヤーが物語を描くことを意図したゲームだったようです。そう。プレイヤーが物語を描くということが、ついに発明されたのです。 前々回では、プレイヤーに語らせたらシナリオがめちゃくちゃになると思われたと書きました。それでは、どうしたらめちゃくちゃにならないのでしょう。その答えの一端が、ついに見つかりました。 ですが、Fudge について語ることができませんので(さきほど、95年版とSRDをDLしたばかりでまだ未読です)、ここでは FATE についてお話ししましょう。 Fudge の後を受けてゼロ年代に登場した FATE にはいわゆる能力値がなく、キャラクターの特徴を自由記述の文章で記述します。というか、キャラクターが何者なのか、シーンがどんな状況なのか、特徴的な要素は全て短いフレーズや文章で表現されます。FATE ではこれをアスペクトといい、そしてアスペクトは、プレイヤーが描いたり利用したりすることができます。 TRPGなので言葉で表現されるに決まってるとお思いでしょう。GMが描いた要素は利用できるともお思いでしょう。でも、違うのです。 FATE の最初の章は「ゲームを作る」です。そこには、全員が協力して舞台設定を作り、全員が設定について同意しなさいと書かれています。その後のゲームプレイは、すべてこの同意を前提とします。舞台について同意したのだから、プレイヤーは他の全員が納得できるPCを作ることができるはずです。しかも、PC作成は担当するPL一人では完結しません。そうして作ったキャラクターは、全員が納得できる行動をして、その結果に至るはずです。それは、言葉によって表現され、言葉によって制限されます。同じように物語そのものも、プレイヤーが描けるはずです。シンプルなルールに従うだけで。そう、厄介な目に遭い、それを克服して、ついに目的を達します。それでは、どんな厄介な目に遭いますか? どんなことが起こったら、全員が楽しめる物語になりますか? 同意した前提の上で厄介な目に遭うキャラクターの姿、その厄介ごとさえもプレイヤーに描かせるという形で、ついにプレイヤーが物語を直接語り、それでもゲームになるようになったのです。 そしてもちろん、プレイヤー判定に成功することで、物語を進める要素をもっと直接的に描くことができます。たとえば、条件を満たして判定に成功すればアスペクトを自由に描くことできす。そのものズバリ「優位に立つ」というルールで要素を積み重ね、誰もが思いもよらなかったような勝利に、誰もが思いもよらなかった方法でつなげることといった具合です。もちろん、それも持っていたんですよ!(これは、それ以前のTRPGにおけるヒーローポイントに近いかもしれませんね) プレイヤーは自分のPCに有利になるように好き勝手するのではないか、という疑問を感じる方もいらっしゃることでしょう。ですからGMがいるのです。GMはプレイヤーの提案を拒否したり、うまく物語に誘導します。いずれにしても明白だったのは、ロールプレイではなく、物語を面白くすることが第一だということでした。物語志向ということが明示されたのです。 それでも、これではあまりに自由すぎるでしょうか? そこで、そこにハンドアウトが発展して合体しました。物語の舞台をあらかじめ決められたものにし、自由度をある程度制限し、特定の方向へのモチベーションを与え、それでもプレイヤー自身に「厄介ごと」を語らせる……こうして、10年頃になるとPbtAのような現代のストーリーゲームが生まれました。さらに、PbtAは物語を駆動するための質問を選択肢としてルールで提示することにも成功しました。その上、別の進化もありました。GMはもうダイスを振らず、難易度設定も不要になり、それどころかシナリオすら不要になったのです。 こうして、ゲームの焦点はあらかじめ書かれたシナリオでもキャラクターの運命でもロールプレイでもなく、全員が物語を語ることになりました。そうしてついには、GMさえも不要になっていきます。 ところで、言葉で全て表現するという方向性は、日本でも Wonder Roads to Lord のようなタイトルで試されましたが、こちらはそれほどプレイアビリティの高いものではなく、プレイヤーの獲得には至りませんでした。
Kei⇒ポール・ブリッツ | |
2021/12/29 21:32[web全体で公開] |
ポール・ブリッツさま、ご機嫌よう。 そういえばヒーローポイントのことをすっかり忘れていましたわ(。 ジェームズボンド007が発祥だったのですね。名前だけしか知らず触れたことがないもので、全く存じませんでした。そしてヒーローポイントが、プレイヤーが物語に積極的に介入できる方法だったというのは、全くおっしゃる通りかと存じます。ありがとう存じます。
ポール・ブリッツ⇒Kei | |
2021/12/29 21:08[web全体で公開] |
> 日記:特定の状況を描く特定のルールが物語を生み出すお話 正気度を発明する以前のものとして、ヒーローポイントというものを発明してプレイヤーにヒロイックな冒険をするよう仕向けた「ジェームズボンド007」も忘れないでやってくださいませ……(^^)
聖岳生馬⇒Kei | |
2021/12/29 17:30[web全体で公開] |
> 日記:特定の状況を描く特定のルールが物語を生み出すお話 こんな長文を毎回書いていて、エネルギーが欠乏しないか心配な生馬です。 SAN値という能力値の発明(?)は画期的でしたね。 HPが0だと死亡すると定義されたり、この能力値は判定成功率が+5%されたりといったルールより とてもあやふやなキャラクターの状態を定義したりしなかったりする数値。 プレイヤーに演出が任されることの発芽だったのかも。
Kei | |
2021/12/29 17:20[web全体で公開] |
😶 特定の状況を描く特定のルールが物語を生み出すお話 老害昔話シリーズです。記憶をもとに書いています。話半分未満のつもりでお読みください。当時の他の資料をご参照ください。また、個人的な事情により、海外システムの話がメインとなりますのでご了承ください。いわゆるFEARゲーのようなシステムがどのように生まれて発展したのかについては、識者の方のエントリをお待ちしております。 ご機嫌よう。 先日、最初期のストーリーゲームについて触れた際に「特定の状況を描く特定のルール」が物語を生み出すと書きました。今回はこのお話をします。というのも、TRPGと物語の関係の軸は、これがその後主流になっていったからです。いまでも、これがTRPGの主流かと存じます。 さて、抽象的な表現ではピンとこないかと存じますが、特定の状況を再現できるルールさえあれば良いことは、クトゥルフの呼び声によって発明されました。そう。正気度です。世界を描くことで物語を描くという方向性を鮮明に打ち出した RuneQuest に続いて、単純な一つのルールがあれば良いことが、同じ Chaosium によって示されました。 正気度という単なる数値の上下が特定の意図した物語を描くということは大変な大発明でした。探索者が正気度を失うことは、英雄がHPを失うこととは決定的に異なるものとして受け入れられたのです。 その後 Pendragon では(これも Chaosium でした)、PCの感情をルールとして表現しました。これは、特定の状況で特定のボーナスを与えることで物語を駆動する試みで、後にライフパスのような方向性に発展していくことになります。感情のルール化は、日本では Far Roads to Load のようなシステムがありました。 決定的な一撃になったのは、90年代を牽引した World of Darkness かと存じます。WoDの最初の作品となった Vampire: the Masquerade には人間性というステータスがあり、そして、ステータスの数値をRPで表現するようにルールで示しました。その後の作品ではこの方向性を推し進め、更なる展開さえ生み出しました。WoDは一時はDnDを凌ぐほどの人気を博し、アンダーワールドのような映画さえ生み出すことになりました。 こうして、ステータスを物語性と直接結びつけるという方向性は、物語を志向するシステムの成功例となりました。 一方で日本では、映画的な物語の構造を「シーン」としてシステムで規定するようになっていきました。そうして、その構造を支えるために、ハンドアウトという発明がされました。ハンドアウトも、TRPGの物語性を決定的に変える大発明でした。 その影で、メジャーなものではありませんでしたが、システムとストーリーの関係を変えるような発明がされていました。そう、ついに、プレイヤーの役割に「物語を描き進める」ことが追加されるようになったのです。
聖岳生馬⇒Kei | |
2021/12/29 17:19[web全体で公開] |
いえいえKeiさんが、頑張ろうかな? と思た段階で期待した価値があるのでありますから 無理でない範囲で、てけとーに。 まあ、40~30年前のことですから、当時に生きていた人が存命なので書きようはあるのではないかと。 そして、生きていた人から「違う」やら「まったくもってその通り」と(矛盾したことを)言われるまでがセットですね。
Kei⇒セス・メイソン(CoC7PC名) | |
2021/12/29 14:44[web全体で公開] |
(続き)当時門倉氏が語られていた手法は、ストーリーをあらかじめシーンまたはエリアで分割し、それぞれのシーン(またはエリア)を別々のプレイヤーがGMするというものでした。もちろん、メインとなる全体を統括するGMはいました。このお話が分かりにくかったのは、リレーキャンペーンと何が違うのかという点でした。パーティーを分割する場合で、かつそれぞれが互いに重大な影響を与える場合、のような説明もありましたが、なかなかピンと来なかったものです。 そして、この遊び方を突き詰めればメインGMは必要なくなるのではないか結ばれていました。 その後のストーリーゲームにおけるGMなしの流れは、これとはまた違うものになりました。それについては、また別のエントリで書こうと思っております。
Kei⇒セス・メイソン(CoC7PC名) | |
2021/12/29 14:44[web全体で公開] |
セス・メイソンさま、コメントありがとう存じます。 GMなしというのは、全員がGMの役割を分担するということです。 Prince Variant で語られていた手法は、あるキャラクターの見せ場シーンなら、演出も語りもそのプレイヤーに任せ、また進行がスタックした時に、思い切ってプレイヤーに全部任せてしまうというものでした。もちろん、ここではGMが作成したプロットから逸脱しないことが前提となっていました。(続きます)
セス・メイソン(CoC7PC名)⇒Kei | |
2021/12/29 13:30[web全体で公開] |
> 日記:とても初期のストーリーゲームについてのお話 コメント失礼します。CoCを主にプレイしてます。 世界観という絶対ルールの中であらゆる試行を許された誰かを主観とした物語。 GM/KPにとってはPLの提案で調整をして奇策と認めたり無駄な行動と拒否したり、駆け引きをする。 TRPGはPLが工夫を凝らして提案し、受けたGM/KPが有効性を(強制的に)考え結果を出すという、 発想と予測を結び付けられる面白いジャンルと思います。 GMなし、今ならAIに任せるイメージでしょうか、パターンに無い新たな提案をするたびに結果予測の算出に時間が割かれて、応答に時間が掛かりそうです。
Kei⇒ポール・ブリッツ | |
2021/12/29 11:38[web全体で公開] |
ポール・ブリッツさま、コメントありがとう存じます。 ゲームグラフィックス誌に面白そうな記事があると聞いたことはございますが、実は拝見したことがございませんの。詳しいお話を期待しますわ。
Kei⇒聖岳生馬 | |
2021/12/29 11:36[web全体で公開] |
聖岳生馬さま、コメントありがとう存じます。 はわわ、これは一回もので続きがあるつもりではございませんでしたし、その知識もないのですぅ。むしろバトンタッチしますので、よろしくお願いしますですわっ(。 ……とりあえず、書けそうな範囲で頑張ってみますが、ご期待に添えるようなエントリにならないかと存じますっ。
ポール・ブリッツ⇒Kei | |
2021/12/29 00:39[web全体で公開] |
> 日記:とても初期のストーリーゲームについてのお話 今から考えると、昔のゲームグラフィックス誌で読者の爆笑を誘っていた「カオスの部屋」に出てきたプレイヤーたちって、「ナラティブ」なゲームの先駆者だったかもしれませんな……特にRtoLで市販シナリオを無視して大悪党のピカレスクロマンを生ききったジャークさんとか……。
聖岳生馬⇒Kei | |
2021/12/29 00:04[web全体で公開] |
> 日記:とても初期のストーリーゲームについてのお話 おお、素晴らしい出だしですね。 曲がりなりにも、その時代にTRPGを知っているだけにどう続くか興味津々です。
Kei | |
2021/12/29 00:00[web全体で公開] |
😶 とても初期のストーリーゲームについてのお話 老害昔話シリーズです。記憶をもとに書いています。話半分未満のつもりでお読みください。当時の他の資料をご参照ください。 ご機嫌よう。 皆さんは当然ながら、TRPGで物語が語られるとお思いでしょう。ですが、初期のTRPGは、少なくともシステムとしては、それほど明確にストーリーを志向しているわけではありませんでした。 もちろんシナリオはありましたし、このシナリオのストーリが良いという評価もありました。ですが、これはとてもとても初期のTRPGシーンに限ったお話ですが、市販されたいわゆるストーリー志向のシナリオというものは必ずしも評価が高かったわけではありませんでした。プレイの結果たまたま生まれた物語をそのままシナリオにしたから、のように評価されることもありました。このようなことがあって、TRPGは小説ではないことが徐々に鮮明になっていきました。 一方で、そういった「たまたま生まれる物語」が楽しいことも知られるようになりました。それなら、どうしたら物語が生まれるのでしょう? 当時の答えは、世界設定だったり、特定の状況を描く特定のルールだったりしました。 さて。 物語の楽しみの一つに、「物語を語る楽しみ」がありました。そう。ナラティブな楽しみです。わたくしが知る限りでは、80年代終わり頃から「物語を語る楽しみ」をシステムに取り入れる動きがありました。 例えば、Prince Variant -- the Storytelling Game というゲームがありました。作者はあの RuneQuest のグレッグおじさまで、あのクトゥルフの Chaosium から発売されました(Chaosium はもともと、RuneQuest を販売するためにグレッグおじさまが興した会社です)。これが、ストーリーテリングを銘打った最初期のゲームではないかと存じます。そして、今のナラティブにも通じるようなルールが搭載されていました。 Prince Variant では、GMがプレイヤーを指名して、このシーンでのGMを代行するように指示することができるとルールに記載されていました。同時に、プレイヤーも自ら「このシーンのGMをする」と手を挙げることもできました(プレイヤーが自ら挙手する場合はGMの許可が必要でした)。そのシーンに適したプレイヤー、というような記載がありましたが、それでも、プレイヤーがPCの視点を超えて物語を語ることができることが、こうして示されました。 こうした流れは90年頃に日本にも紹介されました。門倉直人氏がウォーロック誌上で考察を展開し、その成果は Beyond Roads to Lord というゲーム(のサプリメント)に反映されました。複数GM、さらにはGMなしプレイの提案すらありました。 ですが、ほとんどのプレイヤーはこう思いました。そんなGM役を投げられても困る。 そして、GMもこう思いました。プレイヤーに投げたらシナリオがめちゃくちゃになる。 どちらも共通して、うまくいくはずがないと考えました。 いまから振り返ってみれば、単に遊び方の例が圧倒的に不足していただけのようにも思えます。門倉氏の説明は概念的なものに終始して実践的な例がありませんでしたし、追従する人もいませんでした。そうして、実践を試みた人々は、だいたいこのような結論に至りました。リレーキャンペーンと同じじゃない? 物語を描き進めるというプレイヤーの役割が「発見」されるのは、まだまだずっと先のことでした。
Kei | |
2021/12/28 15:11[web全体で公開] |
😶 Powered by the Apocalypse についてのお話 ご機嫌よう。 最近、個人的にPbtAに触れることが多くなりましたので、軽くご紹介しますわ。現時点では日本語で遊べるPbtAタイトルはありませんが、近日、あのハロウ・ヒルさんから Dungeon World というファンタジー系のPbtAタイトルが発売される予定だそうです。 PbtAはもともと、Apocalypse World というTRPGのルールでした。ポストアポカリプスの世界を舞台にしたナラティブ系TRPGで、判定は2d6上方、PCはクラスとスキルを選ぶ形式です。そう、これだけですと、一見何の特徴もなさそうに聞こえますね。 一方で、このルールは再利用もハックも自由とされていました。そうして海外インディーズシーンでは多くのタイトルに使われることになりました。 とまれ、PbtAはGMありシナリオなしのナラティブ系TRPGです。シナリオはありませんし、不要です。 まずはPbtAのキャラクターについて簡単におさらいしましょう。PCには以下の要素があります。 - プレイブック(いわゆるクラス。選択式です。ない場合もあります) - ムーブ(いわゆるスキル。選択式です。ない場合もあります) - 能力値(またはステータス。3〜5個くらいあります) - PCへの質問と答え(答えは自由記述または選択式、GMによる追加の質問がある場合もあります) - 他のPCやNPCとの絆(自由記述) - ダメージなどの状態 - 加えて、ゲーム中のメカニズムに関する状態がある場合があります プレイブックは可能な限りPC間で重複しないように選ぶという原則ですが、これは物語とどう関わるか、物語中どんな役割を担うかを表すもので、有利不利とかは一切ありません。データ量も少なくシンプルです。NPCにはプレイブックはありません。 ムーブは基本的にプレイブックで指示されたものから選択します。皆さんがおそらくよくプレイされているようなものと異なり、これは多くても10個はないくらいの選択肢から選びます。更に、ムーブはいわゆる「探索技能」や「戦闘技能」のように問題に対処する能力を表すのではなく、どのように物語を進めるかを表すものです。NPCにムーブはありません。 また、PbtA系システムといっても、いろいろなものがあり、中には Wise Women のようにプレイブックもムーブもないものがあります。Blackout のようにサブクラス的なものがあり、プレイブックを二種類から一つずつ選ぶものもあります。ムーブも、タイトルによって固定だったり、選べる数が違っていたりいます。Girl Underground は選択したプレイブックのムーブは全て利用可能ですが、青髭の花嫁なら3つから1つを選びますし、Dungeon Bitchesなら6つから2つに加えて別の2つから1つを選びます。 ステータスの数や種類もタイトルによってまちまちなら、表現される数値の範囲もまちまちですが、大抵の場合は -1〜+2の範囲です。NPCにはステータスはありません。 そして、そのPCがどんな人物かは、質問とその答えによって決まります(もちろん、プレイブックにもこんな背景または性格の人物ですという指示があります)。 例えば Dungeon Bitches の「灯火の少女」なら、こんな質問をされます。「あなたは何から逃げているのですか?」「あなたの人生に欠けているものはなんですか?」「あなたが最も恐れるものはなんですか?」 例えば青髭の花嫁の「妖女」なら、「あなたの口元はどのような感じですか?」「あなたを黙らせたい時、他の人はどうしますか?」 といった具合です。 絆は、他のPC(NPCを含む場合もあります)2人とどのような関係かを表すもので、RPの指針として使うだけの場合もありますし、プレイ中に絆を得たり消費したりする場合もあります。 たいていのキャラ作成の順番は、プレイブックを選ぶ → 質問に答える → 2人との絆を決める → ステータスを決める → ムーブを選ぶという順番でしょうか。 とはいえ、ここまでだと、他のTRPGとそんなに変わらないようにも思えますね。 判定は2d6で、7〜9で部分成功(代償を伴う成功)、10以上で成功です。基本的には。 そしてまた特徴的な部分ですが、基本的に、判定するのは「判定を伴うムーブを行った時だけ」です。それ以外に判定することはありません。NPCは判定しません。 ところで、この判定は、確率的にはかなり渋い気がしますね。完全成功はたったの16.7%です。というか失敗確率が41.7%もあります。判定には関連するステータスを足すことができますし、それ以前にどんなムーブを使っていたかによって更にプラスの修正があることもあります。プラス2されたとしても完全成功は41.7%、失敗は16.7%です。 一方失敗は、どんな厄介ごとが起こって目標を達成できなかったのかを語ります。再挑戦できるかどうかは物語上の要請によって決まりまが、大抵は別のチャレンジにスムーズに移行します。いずれにしても物語はスタックしません。 また一方、ムーブによっては失敗/部分成功/成功のそれぞれに選択肢が示されていて、そこから選ぶことでお話が進むという仕組みになっています。 例えば、Dungeon Bitches の「灯火の少女」の「第六感」ムーブに成功した場合なら、「一番危険なのは誰ですか?」「最も安全な逃げ道はどこですか?」「脅威はどこからやって来ますか?」「敵は何に対して弱いですか?」「なぜこのようなことが起こるのですか?」「私たちが何もしなければどうなりますか?」といった質問のどれかを行うことができます。 これが Girl Underground の「ビースティ」の「知恵を授ける」ムーブに失敗した場合だと、「私の助言はどのように問題を引き起こしますか?」といった質問に答えることになります。 この簡単な例ですと、そんな質問なんか普段からするって思うかもしれませんが、PbtAにおけるムーブは確かにスキルのようなものなので、スキルと同じように使うのですが(条件を満たせば自動発動という場合もあります)、それでもスキルとは違い、物語を前進させるための仕組みです。 もちろん、ムーブを使った結果、自分の次のムーブにプラスの修正を得たり、他のPCのムーブにプラスの修正を与えたりすることもあります。また、これもタイトルによりますが、絆を消費することで判定時のダイスを増やす(その場合、上位2つの出目を使います)ことができる場合もあります。 そして。 初めにお話ししたように、シナリオはありません。ルールブックにはゲームの進め方の説明が書いてありますが、PbtAは(わたくしがこれまで読んだ範囲では、ですが)特定のテーマに結びついた特定の状況を演出することの連続で物語が進みます。そして、テーマはプレイブックやムーブで表現されています。物語とどう関わるか(プレイブック)と、物語をどう進めるか(ムーブ)は既に決まっているので、あとはキーとなる状況さえ描けばよく、それはプレイヤーに質問して決めても構いません。「あなたのプレイブックには○○と書いてありますが、これのせいで厄介ごとが起こるとしたら、どんなことですか?」のように。そうして初めのシーンさえ駆動してしまえば、あとは適切な質問を続けることで、何度でも違った物語を生み出すことができます。 初めのシーンを駆動できればって、それが難しいんじゃないか、適切な質問って、それが難しいんじゃないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。そこで、PbtAでは、GMが何をすべきか、どのようなシーンを描くか、どのように質問するか、全て掲載されています。 例えば、青髭の花嫁では、「花嫁の人生を恐怖で満たすこと」のような要点、「花嫁の不安を掘り下げること」「暴力の気配を感じさせること」のような原則、「恐怖を仄めかすこと」「前の花嫁の苦しみを描くこと」「花嫁に自分の肉体的・社会的限界を思い知らせること」といった具体的指針が書かれています。 もちろん、これは見方を変えれば、システムとシナリオ(あるいはシナリオネタ)が一体になっていると考えることもできるかもしれません。 さて、こう読み返してみますと、この拙い文章では、わたくしがPbtAに感じている魅力を全く伝えることができていないように感じるのですが、興味を持っていただけた方がいらっしゃいましたら存外の喜びですの。
Kei | |
2021/12/27 21:08[web全体で公開] |
😶 今年を振り返ってみましょう ご機嫌よう。 今年のTRPG関連の活動を振り返ってみますわ。 ■ TRPGプレイ GM15回、ナラティブ系PL2回とファシリテーション1回遊びましたの。思ったよりも遊んでいたのかしら。わたくしとしてはナラティブ系の波が来ておりまして、来年はもっともっとナラティブ系の比率を増やしたいですわ。ともあれ、ご参加くださったみなさまありがとうございました。 - CoCキャンペーン#1(全4話9セッションの後半)完走 - CoCキャンペーン#2(全4話8セッション)完走 - 灰色城綺譚 1回 - 我らが王の身罷りて 2回 - ダイアレクト 1回 - Broken Tales 2回 ■ 翻訳など 青髭の花嫁がどうしても気になったことから海外インディーズ作品にも手出しをしまして、12タイトルほど自分で遊べる程度に訳しました。まだ遊べていないですし、こんなタイトルに興味を持っていただける方もなかなかいらっしゃらないのですが、遊びたいですわ。もちろん他にも軽率に購入してしまったタイトルがあり、それらも訳したいところですの。 - 青髭の花嫁 - Svalbard - Soth - ARC Quicstart - FATE Core - FATE Accelerated - Mörk Borg - Nighthawks - Dungeon Bitches - Wise Women - Girl Underground - Blackout ■ 購入したルールブックなど サプリや電子書籍、海外作品のPDFなども含めて、おそらく80冊ほど購入しているようです(そんなに?)。大半を積んでいるのは言うまでもありませんわね。 ■ もちろん良いことばかりでなく CoCキャンペーンを遊んでいた身内卓は解散することになりました。次のキャンペーン制作にも着手しておりましたが、こちらも放棄となりました。
Kei | |
2021/12/26 00:56[web全体で公開] |
😶 Wise Women と Girl Underground を訳しましたの ご機嫌よう。 タイトルの通り、二作品ほど自分で遊べる程度に訳しましたので、ご紹介します。 Wise Women は産業革命前の東欧的な世界を舞台に、魔女ということを隠しながら生きる女性を描くゲームです。魔女は社会にうまく馴染んで(もちろん魔女であることは隠して)疑われることなく生活しているかもしれませんし、社会にうまく溶け込めずに、どうにか疑いの目を逸らしながら生活しているかもしれません。こういったことを描くために、社会的地位というステータスがあるのですが、下がると上げるのが大変な感じになっているでしょうか。 それでは魔女は社会にとって害を成すのかというと、そうでもありません。魔女は蒐集した植物の力を使って魔法を行いますが(これらの植物の力は実際の伝承や当時の書物をベースにしています)、それは社会を守るものの場合もありますし、誰かを傷つけるものもあります。ここで大切なのは、たとえ社会を守る魔法であっても、社会はそのようには見ないという点です。ですので、社会を守るために魔法を使ったのに、疑われ、人々と疎遠になり、やがて害をなす魔法に手を染めるということもあり得ます。 また、魔女が女性や性的少数者の助けになる、というような形でジェンダーをテーマにすることができます(というか、こちらがゲームのテーマかしら)。たとえば、産業革命前の保守的な社会では女性に権利などなく、中絶などもってのほかかもしれません。魔女の元を訪れることで安全に望まない子を産まないことができるとしたら、それは救いになるでしょう。あるいは古典的な男女の概念しか認められていない中で生きるLGBTQ+の人々が魔女の庇護を求めるかもしれません。それでも、そうやって助けた人々も、やがて社会の側から魔女を糾弾するかもしれません。というような葛藤も描くことができます。 あとは、ポーランドの伝承に登場する魔物や妖怪が紹介されていて、なかなか興味深いです。 システム自体はPbtAベースで、遊んだことがある方にはお馴染みの分かりやすいものですが、お馴染みのプレイブックやムーブがないというのが特徴的です。 次に。 Girl Underground は、不思議の国のアリス風な世界を舞台に、社会から押し付けられる「女性らしさ」という規範を打ち破って自分らしさを見つけるというゲームです。わたくしは、このタイトルは女性性をテーマに据えている割にプレイしやすそうという印象を受けました。 というのも、社会が押し付けてくる規範、たとえば「女性は笑顔を絶やしてはならない」「女性は自分のことよりも他人を優先しなければならない」といったものですが、それを最初にいくつか選び、シーンと結びつけて演出した上で、「そんなのは間違ってる」「わたしは○○と主張する」と宣言することがゲームの目的になっています。 シーンと結びつけるのが難しそうだったり、どんなシーンが良いか迷う場合もあるかもしれませんが、十分に遊べそうなシーンの例が、NPCや何を描くことができるかといった記述と共に12個紹介されていて、これらをつなぎ合わせるだけでも十分にセッションになりそうです。もちろん不思議の国ですから、夢渡りのような感じで進めるのが良いでしょう。 こちらもシステムはPbtAですが、主人公の少女は全員で持ち回り、加えて、各プレイヤーは彼女をサポートする不思議な生き物(しゃべる動物や人形、かつて少女と同じようにこの世界にやってきて元の世界に帰らないことを選んだ子どもなど)を演じるという一人二役が特徴かしら。彼/彼女たちは、少女を助けるようにデザインされていますし、演じ方のヒントなども書かれていて、お話が進むようになっています。 あと、わたくしが気に入ったのは、回想のルールです。少女は規範を打ち破る信念を胸に、少女を脅かす規範の権化たる存在(いわゆるラスボス)を倒して元の世界に帰るのですが、後からこの経験を振り返って語ります。その日の夜にママに話すのかもしれませんし、大人になってジェンダーについて語るのかもしれませんし、おばあちゃんになって孫に語るのかも、どんな形なのかプレイヤーにお任せで、いわゆる感想会の機能の一部がプレイの一部に取り込まれています。 それと。 どちらのタイトルも、PCは死なないし、死ぬような危険を演出してはならないことが明示されています(一見そう見えることを制限するものではありませんが)。もちろんPbtAらしく、判定の失敗が「失敗ではない」ことなどもキチンと書かれています。 最後に、これは個人的には重要ですが、どちらも短く、割と平易な英語で書かれていて、スッと読むことができました。
Kei | |
2021/12/22 19:20[web全体で公開] |
😶 女性性をテーマにしたTRPG ご機嫌よう。 青髭の花嫁や Dungeon Bitches を読んで、女性性を主要なテーマにしたTRPGが他にないか興味を持ちましたの。それで、識者の方から以下のようなタイトルを教えていただきましたの(全て英語、クィアを扱ったゲームも含まれています)。 Night Witches 第二次対戦中のソ連に実在した女性ばかりの夜間空爆部隊の一員となるRPGで、夜はドイツのファシストと戦い、昼は赤軍内の性差別に直面するというゲームのようです。 Girl Underground 不思議の国のアリス的な世界にやってきた少女が、仲間たちと一緒に帰り道を探す過程を通して、少女が抑圧を打ち破り、新しく信念を抱くことことで彼女の成長を描くゲームのようです。 Monsterhearts 2 性的少数者のティーンエイジャーとなって、正体を隠しながら高校生活を送る、恋愛を含めた感情が大きな意味を持つ、パーソナルホラー志向のゲームのようです。 Thirsty Sword Lesbians 詳しくはわからないのですが、百合もの? のようです。 Blackout 1940年のロンドン空襲を舞台に、空襲下で人々を守ろうとする民間防衛に従事する女性の一員となって、救命活動に従事しつつも、戦時下を生きる女性としての日常の苦難もあるというゲームのようです。 A Cool and Lonely Courage Blackoutのフランス版のような、枢軸国の占領下にあったフランスなどで、諜報活動やレジスタンス支援などに従事していた特殊作戦執行部の女性エージェントとなるゲームのようです。 Wise Women 産業革命前の東欧的な世界を舞台に、魔女ということを隠しながら生きる女性の姿を描くゲームのようです。 Dream Askew / Dream Apart ジェンダーをテーマに含む、疎外されたコミュニティとそこに属する人々の物語を描くゲームのようです。 どのタイトルにも興味津々ですし、とりあえず全部購入しましたが、全部を訳せるかは……。ともあれ、どれから読むか悩みますね。 また、このエントリをご覧の皆さまもご存じの作品などございましたらコメントいただけますとです。
Kei | |
2021/12/20 00:58[web全体で公開] |
😶 Dungeon Bitchesを読み始めましたの ご機嫌よう。 そんなこんなで、Mörk Borgの訳は(自分で遊べる程度ですが)サクッと終わらせまして(合間にNighthawksもサクッと訳しました)、次はDungeon Bitchesを訳します。ちょっと今は女性性の視点に立ったゲームに興味津々です。 Dungeon Bitchesは、社会から疎外された性的にも少数派の(LGBTQ+の)女性PCが、ダンジョンで共に助け合い、時に愛を確かめたりしながら、危険に立ち向かったりするナラティブTRPGだそうです。ベースシステムはPbtAです。 冒頭から「クィアに敬意を持て」ですとか「トラウマを共有することでひとつになる」ですとか「不幸なレズビアンがダンジョンでめちゃくちゃにされるゲームです」などと書かれたりしていて、かなり激しい予感がしますが、どうでしょう? これ遊んでくださる方はいらっしゃるのかしらん? と不安も感じますが、とまれ、読んで参りましょう。
Kei | |
2021/12/18 11:53[web全体で公開] |
😶 Xカードの導入をお勧めしますの ご機嫌よう。 PLが「〇〇というゲームは公式でそれが認められてるから」のようにゴネたとしても、GMには拒否する権利があります。場合によっては、他のPLにも拒否する権利があります。 同様に、ルールに書いてあったとしても、GMには同様に拒否する権利があります。 GMが拒否したら、PLはそれを受け入れなければなりません。もちろん荒れる原因になるでしょう。首ナイフとか、落下ダメージとか、懐かしいですわね。でも、そこで受け入れられなければ、問題のあるプレイヤーと見做されても仕方ありません。 大事なのでまた言いますが、ゲームをどのように運営するか、ルールをどのように裁定するか、その権限があるのはGMです。ルールでも、デザイナーでも、メーカーでも、出版社でもありません。 さて。 ことが描写に関するものでしたら、Xカードを使うことをお勧めします。GMや他のPLの描写が受け入れられない場合、カードを掲げる、または単に触るだけで、その描写はストップする、という約束です(オンセの場合もちょっと工夫すれば実現できます)。理由を説明する必要はありませんし、理由は関係ありません。問題があれば誰でも中断を求めることがでできます(個人的に話し合って、理由の一部を話さなければならなくことはあり得ます)。 ルールに書いてないですか? でも、ルールに書いてなくても問題が起こるから、こういうツールがあるのです。第0回セッションを行えば? 事前にすり合わせすれば? というのは素朴な感想です。実際にそういう描写がされるまで、地雷だったと気づかない場合だってあります。その時になって「事前に同意した」と言われても、PLだって困るでしょう。 わたくしの卓ではずっとXカードを採用し続けています。実際に使われたことは一度もありませんが、PLの方々はXカードの機能を知って、必要なら使ってくださると信じています。
Kei | |
2021/12/17 21:38[web全体で公開] |
😶 Mörk Borg の訳を始めましたの ご機嫌よう。 FATE Core / Accelerated の訳も(自分で遊べる程度という観点から)ひと段落しましたので、今度は Mörk Borg を訳すことにしましたの。 Mörk Borg は、先日翻訳が出版されたザ・ループTRPGの出版元、Free League から出版されているTRPGで、いわゆるOSRもの(最近のd20システムが複雑すぎるので、初期のシンプルなルールに今風のトレンドなどを載せたもの)かしら。 それで、あと7日で世界が滅びるので、それを回避するにはドゥーム・メタルのライブを開かなければならない……? というダンジョンもの? のようです。ちょっと何を言っているか分からないというか、楽しそうじゃないかしら? 最初の方にチラリと世界設定的なもの? が書かれていて、毎日滅びの予言をd66で選ぶといった感じの、あと7日で滅びる厨二的世界にグッと来るものがございました。そしてルールは本当に最初期のTRPGを彷彿とさせる感じです。懐かしいですわ。 レイアウトも全編にわたって非常に凝っています。わたくしはPDFで買いましたが、これは紙の本で見てみたいですわ。
Kei | |
2021/12/11 14:29[web全体で公開] |
😶 どうしたらうちの子症候群にならないかという例 ご機嫌よう。 うちの子症候群は定期的に話題になるものの一つかと存じます。うちの子症候群と呼ばれるようになったのはここ数年かしら? ずっとずっと昔はキャラクタープレイと言って忌避する方もいらっしゃいました。 さて。 FATE Core をたまたま読んでいる最中ですが(そうです、また FATE Core のお話です)、とても要約すると、こんなことが書かれています。 - PLは、PCがなぜ危険に巻き込まれ続けるのかを考えなければなりません。GMはそうしないPCの相手をしているほど暇はありません。 - 他のキャラクターと異なる魅力的な人物にしてください。 - キャラクターが何者かだけでなく、なぜそのキャラクターの人生は込み入ったものになっているのかを決めてください。 - 個人的なことだけでなく、人間関係に関することも決めてください。 - 他の二人のPCと既に関係があります。相手の設定に乗っかってください。 - 話が盛り上がる設定にしてください。話が盛り上がらない設定は却下します。さらに、話が盛り上がるだけでなく、ややこしくなる設定にしてください。 - 他の人がそれを見て何かできる設定にしてください。他のキャラクターに面白そうなことをさせることができるなら、提案してください。 つまり、自分についてだけ語っていて、自分が有利になるだけの設定は悪い設定で、GMは却下して良いと書かれています。また、大切なのは物語が盛り上がることであってキャラクターではないので、GMや他のPLも、拾える設定はどんどん拾って話を盛り上げてください、とも。 それでも「うちの子はそんなことしない」PLだっているでしょう。その場合の対処もあります。それなら、そうしなかった結果、どんな面倒なことが起こりますか? どんな危険に、どんなトラブルに、どんな望ましくないことに巻き込まれますか? というような質問もあります。これは、絶対に物事が悪い方向に進む前提となっています。 TRPGって、特にPLの視点からだと、RPの方ばかりに重点が行きがちだったり、特に昨今はそういう風潮かとも存じますが、RP自体は、ゲームそのものの目的ではございませんの。ということがよく分かるルールで、FATE Core 自体は2013年の版上げが最後の古いシステムではありますが、わたくしは個人的に読んで良かったかと思っております。 英語ですが、公式サイトから全文をDLすることができます。PWYWです。
Kei⇒ポール・ブリッツ | |
2021/12/10 20:18[web全体で公開] |
> 日記:TRPG接待とかどうだろうか 絶対赤字にしてはいけないのでしたら、リジャイナとジェンゲの間だけを行き来して、余計な依頼とか全部断れば……こほん、なんでもありませんわ。
Kei | |
2021/12/08 20:52[web全体で公開] |
😶 キャラクター作成はセッションの一部というお話 ご機嫌よう FATE Core を読んでいてとても腑に落ちた、素敵なルールだと思った点がございますの。それは、キャラクターを作っている時、もうゲームは始まっている、というルールです。参加者が互いのキャラクターの背景を読んで、それに自分のPCがどう関わるかを相談して決める(それによってゲーム上のステータスを得る)、という仕組みになっています。 キャラクターを持ち込むことによる事故ってよく目にしますが、そもそも持ち込むことができない、同意しなければならないって素敵なルールじゃないかしら。
Kei⇒リハ | |
2021/12/07 01:35[web全体で公開] |
> 日記:我らが王の身罷りて みまかりは、駆け引きや交渉が全くできなくても、そういう要素を含むドラマができてしまう素晴らしいシステムかと存じます。お試しあれ。
Kei | |
2021/12/05 20:28[web全体で公開] |
😶 ダイアレクトを遊びましたの ご機嫌よう。 一年ほど前から折に触れては遊びたいと思っていたダイアレクトを、ついに遊ぶことができましたの。一応一番ベーシックなものということで「先遣隊」を遊びましたが。 素敵な言葉ですとか予想外の展開ですとか闇落ちですとか、びっくりするようなエモさの連続に驚嘆しましたし、とてもとても楽しかったですわ。そもそも導入から予想外な方向に転んだり、展開も素敵な感じのどんでん返しがあり、伏線回収もあり(それが伏線だったの?も含め)、想像を遥かに上回る楽しさでした。わたくしから募集しておいてですが、こんなに楽しいなんて、とわたくし自身が驚きましたの。 ご参加いただいたプレイヤーの皆さま、ありがとうございました。
Kei | |
2021/12/04 15:32[web全体で公開] |
😶 FATE Coreを訳し始めましたの ご機嫌よう。 海外TRPGにも色々なベースシステム(日本で言うとSRSやサイコロフィクションがベースシステムにあたります)がございまして、有名どころでは d20 System や Basic Role-Playing かしら。一部で話題のザ・ループTRPGは Year Zero Engine が採用されていますし、先日訳した「青髭の花嫁」は Powered by the Apocalypse が使われています。PbtAには Belonging Outside Belonging という派生があって、わたくしも気になっている Wanderhome に採用されていたりします。 そんなこんなで、海外(同人)TRPGでよく使われている、その筋では超有名らしいベースシステムの一つ、FATE Core を訳してみることにしました。FATE Accelerated の方がよりシンプルで遊びやすそうなのですが、今回は両方読んでみようかしら? というわけで FATE Core から取り掛かってみています。 おそらく原書は9x6サイズ(ほぼA5版)で300ページほどありまして、先は長そうですけれど、少しずつ進めてまいりましょうという気持ちですの。 因みに原書は公式サイトでPWYWで配布されておりますので、興味がある方はご覧になってみてくださいまし。 ※ なお、FATE Core / FATE Accelerated は、TYPE-MOON の Fate シリーズとは全く関係がございません。